「年末の大掃除、寒くて面倒だな……」 「なんでこんな忙しい時期にやらなきゃいけないの?」
正直なところ、そう思っている方は多いのではないでしょうか? 12月はただでさえ忙しい時期。そこに重労働の掃除が加わると、どうしても気が重くなってしまいますよね。
この記事では、日本人が大切にしてきた大掃除の由来や、やってはいけない日などのマナーについて、わかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 大掃除をする本当の理由は「歳神様(としがみさま)」のお迎え準備
- いつからいつまでに行うべきかのベストタイミング
- 避けるべき「縁起の悪い日」とその理由
大掃除の本来の意味とは?「単なる掃除」ではない理由
昔の日本人は、お正月になるとそれぞれの家に歳神様がやってきて、新しい1年の「幸せ」や「健康(命の力)」を運んできてくれると信じていました。
大切なお客様を家に招くとき、部屋が散らかっていたら失礼にあたりますよね? それと同じで、神様をお迎えするために家の中を清め、失礼のないように整えるのが大掃除の本来の目的なのです。
「掃除」ではなく「清める」
日常の掃除は「汚れを取る」ことがメインですが、大掃除は「場を清める(きよめる)」という意味合いが強くなります。1年の間にたまった「厄(やく)」や「穢れ(けがれ)」を払い落とし、真っさらな状態で新年を迎えるための儀式といえるでしょう。
コトクマ「掃除しなきゃ」と思うと義務感で辛くなりますが、「神様をおもてなしする準備」と考えると、少し前向きな気持ちになれませんか? 玄関だけでもピカピカにすると、良い気が入ってくるような気がしますよ。
大掃除の由来・歴史は「すす払い」
すす払いとは?
昔の家は囲炉裏(いろり)やかまどを使って火を焚いていたため、家の中、特に天井や梁(はり)にはたくさんの「煤(すす)」がつきました。この煤を払い落とすことは、単なる掃除ではなく、火の神様や家の守り神に対する信仰の表れでもありました。
江戸時代に庶民へ定着
江戸時代になると、12月13日を「正月事始め(しょうがつことはじめ)」とし、この日に江戸城ですす払いが行われるようになりました。それが次第に庶民にも広まり、「大掃除=お正月の準備のスタート」として定着したのです。
なぜ12月13日なのかというと、旧暦ではこの日が「鬼宿日(きしゅくにち)」という、婚礼以外は何をするにも大吉とされる縁起の良い日だったからだと言われています。



昔のすす払いでは、笹竹の先に藁(わら)などをつけた専用の道具を使っていました。今でも神社などでは、12月13日に長い竹を使って埃を払う神事が行われていますね。ニュースで見かけたら「ああ、お正月の準備が始まったんだな」と感じてみてください。
いつやるのが正解?大掃除の時期と縁起のよい日
「12月13日が事始め」といっても、現代の生活スタイルでその日から大掃除を始めるのはなかなか難しいですよね。現代では、いつ行うのがベストなのでしょうか。
開始の目安
早めに少しずつ始めるのが理想ですが、一般的には仕事納めやクリスマスが終わった12月26日頃から本格的に始める家庭が多いようです。
終了の目標日
大掃除とお正月の飾り付けは、12月28日までに終わらせるのが最も縁起が良いとされています。 「28」という数字にある「八」は、裾が広がっている形から「末広がり(すえひろがり)」と呼ばれ、日本では昔から「未来に向けて運が開けていく」縁起の良い数字とされているためです。
スケジュール例
- 12月13日〜: 計画を立てる、不用品を少しずつ捨てる(プレ大掃除)
- 12月26日〜27日: 窓拭きや水回りなど、大掛かりな掃除
- 12月28日: 仕上げ掃除と、お正月飾りの設置【完了目標!】



年末のゴミ収集の最終日(収集納め)は地域によって違います。「せっかく掃除したのにゴミが捨てられない!」とならないよう、まずは自治体のゴミ出しカレンダーを確認し、そこから逆算して計画を立てるのが成功のコツです。
【要注意】大掃除を避けるべき日とマナー
避けるべき日リスト
- 12月29日
- 理由: 「9」という数字が「苦(く)」に通じるため、「二重苦(にじゅうく)」となって縁起が悪いとされています。
- 補足: 一部では「29=福(ふく)」と読んで良しとする考え方もありますが、一般的には避けるのが無難です。
- 12月31日(大晦日)
- 理由: お正月飾りを31日に飾ることを「一夜飾り(いちやかざり)」と言い、神様に対して「準備がギリギリで誠意がない」として失礼にあたります。掃除も同様で、大晦日は本来、歳神様を迎えて静かに過ごす日。この日にバタバタと掃除をするのはマナーとして好ましくありません。
- 1月1日(元日)
- 理由: 元日に掃除をすると、せっかく歳神様が運んできてくれた「福」まで掃き出してしまうと言われています。この日は掃除道具もお休みさせましょう。



「どうしても忙しくて29日か31日しかできない!」という方もいると思います。その場合は、あまり神経質になりすぎず、「気持ち」を大切にしましょう。「遅くなってすみません」という謙虚な心で、水回りだけでもサッと綺麗にするだけで十分意味はありますよ。
現代における大掃除のメリット(心理的効果)
ここまでは伝統的な意味をお伝えしましたが、現代の私たちにとって、大掃除は「心のデトックス」という大きなメリットがあります。
心の区切りをつける
「部屋の乱れは心の乱れ」という言葉があるように、空間の状態は心に影響します。1年間の汚れを落とす作業は、心の中に溜まったモヤモヤやストレスをリセットする効果があります。
感謝の気持ちを育む
毎日雨風をしのいでくれる家、便利な家電、家具。これらに「1年間ありがとうございました」と感謝しながら磨くことで、モノを大切にする気持ちや、今の生活へのありがたみが湧いてきます。これを「マインドフルネス」の一種と捉える人も増えています。
家族のコミュニケーション
家族みんなで役割分担をして協力することは、絆を深める良い機会です。「高いところはお父さん」「お風呂はお母さん」「玄関は子供たち」など、チームワークで達成感を共有できます。



掃除が終わった後の空気って、なんだか澄んでいて気持ちいいですよね。ピカピカになった部屋で食べる年越しそばの味は格別です。「家族みんなが健康で新年を迎えられること」への感謝を感じられる瞬間です。
大掃除の「意味」を知って効率よく進めるコツ
意味やマナーを押さえた上で、実際に大掃除を進めるための基本ルールを3つご紹介します。これを知っているだけで効率が段違いです。
1. 「上から下へ」が鉄則
ホコリは重力で下に落ちます。床を先に拭いてから照明の掃除をすると、また床が汚れて二度手間になります。
- 順序: 天井・照明 → 壁・棚 → 床
- ※神棚がある場合は、一番最初に綺麗にするのがマナーです。
2. 「奥から手前へ」
汚れや悪い気を、家の奥から玄関(出口)に向かって追い出すイメージです。
- 順序: 奥の部屋 → 廊下 → 玄関
3. 不用品を先に処分する(断捨離)
モノが多い状態で掃除をするのは大変です。まずは不要なモノを手放しましょう。風水でも、古いモノには古い気が宿ると言われます。新しい運気が入ってくるスペース(余白)を作ることが大切です。



完璧を目指さなくて大丈夫です。家中すべてをピカピカにするのが無理なら、「神様の通り道」である玄関と、「悪い気が溜まりやすい」とされるトイレ・水回り。この2箇所だけでも重点的に行えば、大掃除としては十分合格点ですよ!
よくある質問(FAQ)
Q1. 大掃除はいつからいつまでにするのが正しいですか? 本来は12月13日の「事始め」から始め、12月28日までに終わらせるのが理想です。29日は「苦」に通じ、31日は「一夜飾り」となるため、できるだけ28日までに飾り付けまで完了させましょう。
Q2. 大掃除をしないと縁起が悪いですか? 「しないと不幸になる」わけではありませんが、大掃除は厄を落とし、新年の神様をお迎えする準備です。まったく何もしないよりも、玄関を掃いたり、換気をして空気を入れ替えたりするだけでも、気持ちよく新年を迎えられるはずです。
Q3. マンション暮らしですす払いができない場合は? 現代の住宅ですす払いは必要ありません。その代わり、天井の隅や照明器具のホコリをハンディモップなどで落とせば、それが現代版の「すす払い」になります。
Q4. 12月29日や31日しか掃除できる日がありません。どうすればいいですか? あくまで風習ですので、どうしても日程が合わない場合は気にしすぎなくて大丈夫です。その場合、「福(29)」と前向きに捉えたり、31日の早めの時間に済ませたりして、心の中で「神様、お待たせしました」と唱えながら行えば問題ありません。
まとめ:大掃除で心を整えて、よい新年を迎えよう
大掃除は、単なる「家の掃除」ではなく、「心の大掃除」でもあります。
- 意味: 歳神様をお迎えするために、1年の穢れを清める神事。
- 時期: 12月28日までに終わらせるのがベスト。
- コツ: 無理をせず、感謝の気持ちを持って行うこと。
「面倒くさいな」と思っていた大掃除も、「自分と家族に良い運気を呼び込むための儀式」だと思えば、少しやる気が湧いてきませんか?
まずは、「今年一年お世話になったモノを、ひとつだけ捨ててみる」ことから始めてみてください。 家と心をスッキリ整えて、素晴らしい新年をお迎えしましょう!

