一年の仕事を締めくくる大切な日、「納会(のうかい)」。 そんな大事な場で、「乾杯の挨拶、お願いできるかな?」 と突然上司に言われたら……ドキッとしてしまいますよね。
「気の利いたことを言わなきゃいけないの?」 「面白いことを言って盛り上げるべき?」 「そもそも、忘年会の挨拶とは何が違うの?」
そんなプレッシャーを感じて、今まさにスマホで検索しているあなたへ。 安心してください。納会の乾杯挨拶に、お笑い芸人のようなトーク力は一切必要ありません。
必要なのは、みんなの心を温める「ちょっとした気遣い」と、失敗しないための「シンプルな型」だけ。 この記事では、言葉のプロである「コトバノモリ」編集部が、誰でも30秒で社員の心を掴める「乾杯の極意」を伝授します。
この記事を読み終わる頃には、不安だった挨拶が「よし、やってやろう!」という楽しみに変わっているはずですよ。
この記事でわかること
- 「えっ、短っ!」と思われない、ベストな挨拶の秒数
- 急な指名でも焦らない「魔法の4ステップ構成」
- グラスを持つ手はどうする?意外と知らない「美しい所作」
そもそも「納会」の乾杯とは? 忘年会との違いと基本マナー
まずは、敵(?)を知ることから始めましょう。 「納会」と「忘年会」、似ているようで実はその目的には明確な違いがあります。ここを履き違えると、少し場違いな挨拶になってしまうかもしれません。
納会と忘年会の違い、知っていますか?
結論から言うと、納会は「業務の一環」、忘年会は「慰労のための宴会」 という側面が強いです。
納会(仕事納め) は、その年の最後の業務終了後に、会議室や社内のスペースで行われることが多い行事。「今年も無事に業務を納められましたね、お疲れ様でした」と、一年間の成果を確認し合う儀式のような意味合いがあります。 一方、忘年会 は、場所を居酒屋やレストランに移して、「嫌なことは忘れてパーっと飲もう!」というプライベートに近い宴会です。
つまり、納会の挨拶では、「少しだけオフィシャルな空気」 を残しつつ、これから始まる無礼講の時間への橋渡しをする役割が求められます。



納会はまだ「社内」にいる状態で行われることが多いので、ネクタイを緩めすぎない(物理的にも精神的にも) のがポイント。「この一年、みんなで頑張った」という連帯感をキーワードにすると、場の空気がグッと締まりますよ。
乾杯の挨拶、ベストな「長さ」は?
これが一番の悩みどころですよね。「短すぎると手抜きに見えるし、長いと嫌がられる……」。 正解をお伝えします。
納会の乾杯挨拶は、「30秒〜1分以内」がベストです。
文字数にすると、150文字〜300文字程度。 「えっ、そんなに短くていいの?」と思うかもしれませんが、乾杯の挨拶において「短さは正義」です。
みんなの手には、冷えたビールや飲み物が握られています。長い挨拶を聞いている間に、ビールの泡は消え、腕は疲れ、テンションは下がってしまいます。「早く飲ませてくれ!」というのが参加者の本音なのです。
「挨拶が短い」と言って怒る人はいませんが、「挨拶が長い」と言って不満を持つ人は山ほどいます。 恐れずに、コンパクトにまとめましょう。
【図解】登壇から発声までの「美しい所作」
言葉の内容と同じくらい大切なのが、「見た目の振る舞い(ノンバーバル・コミュニケーション)」 です。 堂々とした所作は、言葉の説得力を何倍にも高めてくれます。
- 名前を呼ばれたら、元気よく返事をする
- まずは「はい!」と短く元気に。これだけで「やる気があるな」と好印象です。
- グラスは持たずに前に出る
- ここ、重要です!自分のグラスはテーブルに置いたまま、マイクの前(または定位置)に進みましょう。片手が塞がっていると、どうしても姿勢が悪くなります。
- マイクは胸の高さでキープ
- 口元に近づけすぎると音が割れ、遠すぎると聞こえません。こぶし一つ分くらい空けて、胸の前で構えます。
- 視線は「Z」の字に配る
- 一点を見つめると緊張します。会場の左奥→右奥→手前……と、アルファベットの「Z」を描くように視線を動かすと、全員に語りかけているように見えます。
- 挨拶が終わってからグラスを持つ
- 「それでは、乾杯の準備をお願いします」と言ってから、自分のグラスを手に取りましょう。
【失敗知らず】乾杯挨拶の黄金フォーマット(4ステップ構成)
「何を話せばいいかわからない!」とパニックになる必要はありません。 納会の挨拶には、古くから愛される「黄金のフォーマット」があります。この4つのステップに言葉を当てはめるだけで、誰でも完璧な挨拶が作れます。
構成はこれだけ覚えればOK!
基本の構成は以下の4段構えです。
- 【労い】 1年間のお礼と、集まってくれたことへの感謝。
- 【回顧】 今年1年を象徴するトピック(短く!)。
- 【展望】 来年へのポジティブな一言、または会の趣旨説明。
- 【発声】 元気よく「乾杯!」
具体的に見てみましょう。
| ステップ | 内容の例 | フレーズ例 |
|---|---|---|
| 1. 労い | 皆さんへの感謝 | 「皆さん、1年間本当にお疲れ様でした!」 |
| 2. 回顧 | 今年の成果や苦労 | 「今年は大きなプロジェクトもあり、大変な時期もありましたが、皆さんの団結力で乗り切れました。」 |
| 3. 展望 | これからへの期待 | 「今日はその疲れを癒やして、来年への英気を養いましょう。」 |
| 4. 発声 | 合図 | 「それでは、乾杯!」 |
この流れさえ頭に入っていれば、途中で言葉に詰まっても「次は来年の話だ」と思い出せるので、頭が真っ白になるのを防げます。
聴衆を惹きつける「最初の一言」の選び方
挨拶の冒頭、シーンとしている会場で第一声を発するのは勇気がいりますよね。 ここで聴衆の心を「グッ」と掴むテクニックをいくつか紹介します。
パターンA:潔く宣言する「ショートカット宣言」
「ご指名にあずかりました、〇〇です。ビールがぬるくなってしまいますので、挨拶は手短にさせていただきます!」
これは最強の掴みです。「お、わかってるね!」と会場全体が味方になります。笑いも取りやすく、ハードルも下がるので一石二鳥です。
パターンB:素直に白状する「緊張してます開示」
「大勢の前で話すのは苦手で、今、足が震えておりますが、精一杯音頭をとらせていただきます!」
強がるよりも、弱みを見せたほうが「頑張れー!」という温かい空気が生まれます。特に若手社員の方におすすめです。
パターンC:季節感を出す「共感アプローチ」
「外は厳しい寒さでしたが、この会場は皆さんの熱気でとても温かいですね」
少しベテラン向きですが、場の雰囲気を肯定することで、一体感を作り出すことができます。



最初の第一声は、普段より「0.5トーン高く」「1.2倍大きな声」 を意識してみてください。 人は自信なさげな声を聞くと不安になりますが、明るく通る声を聞くと、自然と「楽しい会になりそうだな」と期待値が上がります。内容は普通でも、声が明るければ100点満点です!
【立場・シーン別】そのまま使える!納会・乾杯挨拶の例文集
ここからは、コピー&ペーストして少しアレンジするだけで使える例文をご紹介します。 ポイントは、「自分の立場に合った役割」を演じることです。
1. 若手・新入社員向け(フレッシュさ・元気重視)
若手の武器は「元気」と「勢い」です。難しい言葉や教訓めいた話は一切不要! 「私が一番元気よく音頭をとります!」という姿勢だけで、会場はパッと明るくなります。
【例文】 「ご指名ありがとうございます! 入社1年目の〇〇です。
今年は右も左もわからない私を、先輩方が温かくご指導くださり、本当にありがとうございました。 来年は少しでも皆さんの戦力になれるよう、全力で走り抜けたいと思います!
今日は、一年間の疲れを吹き飛ばすくらい、元気に乾杯の音頭をとらせていただきます。 皆さん、グラスのご準備はよろしいでしょうか?
2024年が、皆さんにとって素晴らしい一年となりましたことに感謝して……乾杯!」
ここがポイント: 「戦力になれるよう」という前向きな姿勢と、「グラスのご準備は〜」という気配りをセットにすることで、しっかりした印象を与えられます。
2. 中堅社員・リーダー向け(共感・チームワーク重視)
現場の中心にいる中堅社員は、みんなが共有している「苦労」や「達成感」を代弁するのが役割です。 具体的なエピソードを少し交えることで、「ああ、あんなこともあったな」と一体感が生まれます。
【例文】 「お疲れ様です、〇〇です。
今年を振り返ると、特に夏の〇〇プロジェクトの時期は本当に大変でしたね。 あの時、チームの垣根を超えて助け合った光景は、今思い出しても胸が熱くなります。 こうして無事に全員で笑顔で納会を迎えられたこと、本当に嬉しく思います。
今日は、その時の苦労話も肴(さかな)にしつつ、大いに労をねぎらい合いましょう! それでは、当社のさらなる発展と、皆さんのご健勝を祈念いたしまして、乾杯!」
ここがポイント: 「あの時は大変だった」→「でも乗り越えた」というストーリーは、飲み会の最高のスパイスになります。
3. 管理職・部長向け(安心感・短さ重視)
責任ある立場の方は、あえて「短く」話すのがスマートな大人の余裕です。 部下の頑張りを認め、「今日は無礼講で楽しもう」と許可を出すことで、場の緊張を解きましょう。
【例文】 「皆さん、一年間本当にお疲れ様でした。
今年は業界全体が変化の激しい年でしたが、皆さんがそれぞれの現場で粘り強く対応してくれたおかげで、良い結果を残すことができました。心から感謝しています。
今日は仕事のことは忘れて、美味しいお酒と食事を楽しみましょう。 私も今日は、一人の参加者として皆さんと語り合いたいと思います。
それでは、一年間の皆さんの奮闘を称えて……乾杯!」
ここがポイント: 「私も一人の参加者として」という一言で、部下が話しかけやすい雰囲気を作ることができます。
【緊急用】急に指名された時の「魔法の3行フレーズ」
「おい、〇〇! 乾杯やってくれ!」 事前の打診なく、突然の無茶振り……。頭が真っ白になりますよね。 そんな時は、この「魔法の3行フレーズ」を思い出してください。これだけで乗り切れます。
1. 指名への感謝 「突然のご指名で驚いておりますが、光栄です!」
2. 目についた「良いこと」を一つ言う 「こうして皆さんの笑顔を見渡すと、今年も良い一年だったなと実感します。」
3. 勢いで乾杯 「それでは、皆さんの笑顔に……乾杯!」
ここがポイント: 余計なことは言わず、「笑顔」や「活気」など、今その場で見えているポジティブなことを口にするだけで、立派な挨拶になります。
「あ、この人いいな」と思わせる上級テクニック
基本を押さえた上で、さらに「デキる!」と思わせる小さな工夫をご紹介します。
具体的なエピソードを「1つだけ」入れる効果
総花的な「頑張りました」よりも、たった一つの具体的なシーンのほうが心に刺さります。 例えば、「11月のトラブル対応の時、遅くまで残ってくれた皆さんの背中が頼もしかったです」など。 ただし、個人名は出しすぎないのが無難です(名前が出なかった人が寂しい思いをするため)。「〇〇チームの皆さん」「若手の皆さん」など、少し広い括りで褒めるのがコツです。
リモート参加者・飲めない人への「神配慮」
今の時代、全員が会場にいるとは限りませんし、お酒を飲まない人も増えています。
- リモート参加者へ: 「画面の向こうの皆さんも、準備はいいですか?(カメラに手を振る)」
- 飲めない人へ: 「アルコールの方も、ソフトドリンクの方も、それぞれのグラスを高らかに上げてください!」
この一言があるだけで、「この人は視野が広いな」と評価が爆上がりします。
よくあるトラブルとQ&A(FAQ)
最後に、乾杯の挨拶にまつわる「あるあるトラブル」への対処法をまとめておきます。
Q. 前の人の挨拶と内容が被ってしまったら?
A. 堂々と「乗っかる」のが正解です。 焦って違う話を探す必要はありません。「先ほど部長がおっしゃった通り、私も本当にそう思います!」と肯定し、「ですので、私は手短に乾杯の発声をさせていただきます!」と繋げれば、むしろ潔くて好印象です。
Q. 緊張で頭が真っ白になったら?
A. 「飛びました!」と笑顔で宣言しましょう。 沈黙するのが一番怖いです。「緊張で用意していた言葉が飛んでしまいました! とにかく、皆さんと飲めるのが楽しみです。乾杯!」と言えば、会場はドッと湧いて温かい拍手に包まれます。
Q. 「忌み言葉」は気にするべき?
A. 納会ではそこまで神経質にならなくてOK。 結婚式ではないので、「終わる」「切れる」「流れる」などの言葉に過敏になる必要はありません。ただし、「倒産」「赤字」などのネガティブすぎるワードはもちろんNG。明るい未来を連想させる言葉を選びましょう。
まとめ:乾杯は「合図」ではなく「スイッチ」
ここまで、納会の乾杯挨拶について解説してきました。
乾杯の挨拶は、単なる「飲み会を始める合図」ではありません。 仕事モードで張り詰めていたみんなの心を解きほぐし、「お疲れ様、よく頑張ったね」と労い合うための「スイッチ」です。
上手なことを言う必要はありません。 流暢に喋る必要もありません。
あなたの、「一年間ありがとう」という素直な気持ちと、「乾杯!」という元気な声さえあれば、それは最高の挨拶になります。
さあ、マイクの前に立つ準備はできましたか? 自信を持って、そのスイッチを押してあげてください。 あなたの挨拶で、最高の納会がスタートしますように!

