ビジネスメールの最後、なんとなく「よろしくお願いします」だけで終わらせていませんか? あるいは、上司や取引先に何かをお願いするとき、「ご検討ください」と書いて、「ちょっと偉そうに見えないかな……」と不安になったことはないでしょうか。
実は、そんな時にこそ使いたいのが「ご検討のほど」という言葉です。
このたった数文字を加えるだけで、あなたのメールはぐっと柔らかくなり、相手への「思いやり」が伝わる文章に変わります。
この記事では、言葉のプロである編集者が、以下の3つのポイントを中学生でもわかるように優しく解説します。
- 「ご検討のほど」をつけると、なぜ印象が良くなるのか?(言葉の仕組み)
- そのままコピペOK!相手やシーン別の「魔法のフレーズ集」
- 意外とやりがちな失敗と、スマートな言い換え表現
言葉の意味を知るだけでなく、「明日から自信を持ってメールが送れる自分」になりましょう!
「ご検討のほど」ってどういう意味?中学生でもわかる徹底解説
まずは、「ご検討のほど」という言葉が持つ本当の意味を、分解して見ていきましょう。 難しく考える必要はありません。パズルのように言葉を分けてみると、その温かいニュアンスが見えてきます。
「検討」と「ほど」を分解してみよう
この言葉は、大きく2つのパーツに分かれます。
- 「検討(けんとう)」 物事を詳しく調べて、「それが良いか悪いか」「実行すべきかどうか」をじっくり考えること。 単に「見る(確認)」だけでなく、「考えて判断する」という深い意味があります。
- 「〜のほど」 ここが一番のポイントです! 「ほど」は漢字で書くと「程」。これは、「〜くらいの」「〜のような状態」という意味を持つ言葉です。 断定するのを避けて、表現を少し「ぼかす」役割があります。
つまり、「ご検討のほど、お願いいたします」をつなげると、 「(強制はしませんが)詳しく調べて考えるということを、どうかお願いします」 といった意味になります。
なぜ「ほど」をつけると丁寧になるの?(クッション効果)
「検討してください」とハッキリ言わずに、なぜわざわざ「〜のほど」とぼかすのでしょうか? それは、相手への「強制感」を消すためです。
イメージしてみてください。 キャッチボールをする時、相手に向かってボールを力いっぱい直線で投げつけたら(=直球)、相手は「痛い!」「怖い!」と感じてしまいますよね。
言葉も同じです。「検討してください!」という言い方は、正しい敬語ではありますが、相手によっては「(私の言うことを)考えてよ!」という強いボールに見えてしまうことがあります。
そこで「ほど」というクッションの登場です。
- 直球:「ご検討ください」(=考えてください!)
- クッションあり:「ご検討のほど、お願いします」(=考えるということを、お願いできますか?)
「ほど」をつけることで、ボールがふわりと山なりになり、相手が受け取りやすくなります。 「あなたのペースでいいですよ」「無理強いはしませんよ」という余白が生まれるのです。これが、日本語特有の奥ゆかしい気遣いです。



若手社員の方から、「『ほど』をつけると、まわりくどくないですか?」と聞かれることがあります。 確かに欧米のビジネス文化では「Yes/No」をハッキリ求めますが、日本のビジネスシーン、特に目上の方への依頼では、この「白黒つけすぎない曖昧さ」が「礼儀正しさ」として評価されることが多いですよ。
「ご検討ください」との違いは?
よく似た「ご検討ください」との使い分けに迷う人も多いでしょう。
| 言葉 | ニュアンス | おすすめの相手 |
|---|---|---|
| ご検討ください | 「〜してください」という命令の形が含まれるため、少し強い印象になることも。 | 同僚、部下、すでに親しい取引先 |
| ご検討のほど | 依頼の形(〜をお願いします)をとるため、柔らかく、相手を敬う姿勢が伝わる。 | 上司、お客様、目上の方、初めて連絡する相手 |
どちらも間違いではありませんが、「迷ったら『ご検討のほど』を使っておく」のが、失敗しない大人のマナーと言えます。
【コピペOK】シーン別「ご検討のほど」魔法のフレーズ集
意味がわかったところで、実際のビジネスメールですぐに使えるフレーズをご紹介します。 そのままコピー&ペーストして、宛名や状況に合わせて調整して使ってみてくださいね。
基本の型(社外・目上の人へ)
もっとも一般的で、誰に対しても失礼にならない基本の形です。
- 「何卒(なにとぞ)ご検討のほど、よろしくお願いいたします。」
【解説】 「何卒(なにとぞ)」という言葉は、「どうか」「どうしても」という意味の強力なお願いワードです。これを頭につけることで、「真剣にお願いしています」という気持ちがプラスされます。
<使用例:企画書を送るメール>
添付の企画書にて、新商品のプロモーション案をまとめました。 ご多忙の折恐縮ですが、何卒ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
控えめにお願いしたい時(相手にNOと言わせる余地を残す)
相手が忙しそうな時や、ちょっと無理なお願いをしているかも……という時は、さらに腰を低くしてみましょう。
- 「ご検討いただけますと幸いです。」
- 「ご検討のほど、お願い申し上げます。」
【解説】 「〜だと幸いです(嬉しいです)」という言い方は、「もしできたらで構いません」というニュアンスを含みます。相手に「No」と言う逃げ道を作ってあげる、高度な気遣いのテクニックです。
<使用例:スケジュールの調整>
次回のお打ち合わせ日程につきまして、いくつか候補日を挙げさせていただきました。 貴社のご都合もあろうかと存じますが、ご検討いただけますと幸いです。
もう一度お願いしたい時(催促の場面)
一度メールしたけれど返事がない……。でも、「早く見てください!」とは言いにくい。そんな「催促」の場面でも活躍します。
- 「重ねてご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。」
【解説】 「重ねて(かさねて)」は「もう一度」という意味の丁寧語。「しつこくてすみません」というニュアンスを込めつつ、改めてお願いする時に便利です。 ただし、いきなりこの言葉だけ送ると冷たいので、前置き(クッション言葉)を添えるのがコツです。
<使用例:返信がない時の再送メール>
先日お送りいたしました見積書の件、その後の状況はいかがでしょうか。 お忙しいところ大変恐縮ですが、重ねてご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
見積もりや提案書を送った時(急ぎではない場合)
「とりあえず渡しておくので、時間が空いた時に見てね」と伝えたい時のフレーズです。
- 「お手すきの際に、ご検討のほどよろしくお願いいたします。」
【解説】 「お手すきの際に」=「手が空いた時でいいので」という意味。これを添えることで、相手は「あ、今すぐ返事しなくていいんだな」と安心できます。



この「お手すきの際に」は諸刃の剣でもあります。「いつでもいい」と言われると、人は後回しにしがちだからです。 本当に契約を取りたい時や、期限がある時には使わないようにしましょう!
意外とやりがち?気をつけるべき3つのNGマナー
いくら丁寧な言葉でも、使い方を間違えると逆効果になってしまうことがあります。 ここでは、新入社員の方だけでなく、ベテランでもうっかりやってしまいがちな3つの注意点を紹介します。
1. 「ご検討してください」は間違いではないけれど…
「ご検討のほど」の代わりに、「ご検討してください」と書く人がいます。 文法的に間違いではありませんが、ビジネスの現場では「ご検討ください」か「ご検討のほど〜」を使うのが一般的です。
「ご検討してください」という言葉は、丁寧語の「ご」+「検討」+「して(する)」+「ください」と要素が多く、少し幼稚な印象や、くどい印象を与えてしまうことがあります。スマートな印象を与えたいなら避けたほうが無難です。
2. 自分に対して使っていない?
敬語の基本ルールですが、「検討」に「ご」をつけていいのは、相手がすることに対してだけです。
- × NG: 「持ち帰って、私がご検討します」
- ○ OK: 「持ち帰って、私が検討いたします」
自分が行う場合は、シンプルに「検討いたします」と言いましょう。うっかり「ご」をつけてしまうと、「自分を敬っている(偉いと思っている)人」になってしまいますよ!
3. 本当に急いでいる時には向かない
先ほどお伝えした通り、「ご検討のほど」は相手への配慮を含んだ柔らかい言葉です。 裏を返せば、「緊急度」が伝わりにくいというデメリットもあります。
サーバーのトラブル対応や、今日中に返事が欲しい緊急事態の時に「ご検討のほど〜」と送ると、「ああ、後で考えればいいのかな」と勘違いされてしまうかもしれません。
<本当に急いでいる時は?>
「至急、ご確認をお願いいたします」 「恐れ入りますが、本日中にご回答をいただけますでしょうか」
このように、ストレートな表現に切り替える判断力も大切です。
編集者コラム:「よろしく」がないとぶっきらぼう? たまに「ご検討のほど。」と体言止めで終わったり、「ご検討のほどお願いします」と短縮するメールを見かけます。 間違いではありませんが、少しぶっきらぼうに聞こえませんか? 「ご検討のほど、よろしくお願いいたします」と「よろしく」を挟むことで、リズムが良くなり、全体の印象がグッと丁寧になります。言葉のクッションを惜しまないのがコツです。
言われた側のマナー!スマートな「返信」の仕方
自分が送るだけでなく、相手から「ご検討のほど〜」と言われた時の返し方も知っておきましょう。 「検討して」と言われたら、無視せずに「どうするのか」を伝えるのがマナーです。
その場で「OK」や「断る」場合
すぐに結論が出る場合は、以下のように返信します。
- 承諾(OK)する場合 「ご提案ありがとうございます。ぜひ、前向きに進めさせていただきます。」 「喜んでお受けいたします。」
- 断る(NO)場合 「誠に残念ですが、今回は見送らせていただきます。」 「ご期待に添えず申し訳ございませんが、今回は辞退させていただきます。」
断る場合でも、「検討した結果、難しかった」というニュアンスを伝えるために、「見送る」「辞退する」といった言葉を使うと角が立ちません。
時間がかかる場合(「検討します」と伝える)
すぐに返事ができない場合、一番ダメなのは「放置すること」です。 「メールは届いていますよ、今考えていますよ」ということを伝えましょう。
- 「ご提案ありがとうございます。社内で検討の上、○月○日までに回答いたします。」
- 「一度持ち帰り、上長と相談させていただきます。」
これだけで、相手は安心して待つことができます。
表現の幅が広がる!言い換え&類語リスト
「検討」するほど大げさな話ではない時や、もっとピンポイントにお願いしたい時に使える言い換え表現です。 これらを使い分けられると、「語彙力がある人だな」と思われますよ。
資料をパッと見てほしい時
- 「ご一読(ごいちどく)のほど、よろしくお願いいたします。」 (意味:ざっと読んでください)
- 「ご確認(ごかくにん)のほど、よろしくお願いいたします。」 (意味:内容を確かめてください)
目上の人に敬意を払って見てほしい時
- 「ご高覧(ごこうらん)のほど、よろしくお願いいたします。」 (意味:高い地位にいるあなたが、見ることをお願いする) ※社長や役員、格式高い取引先に使います。
- 「ご査収(ごさしゅう)のほど、よろしくお願いいたします。」 (意味:よく調べて受け取ってください) ※請求書や納品物など、添付ファイルがある時によく使われます。
事情を汲んで考えてほしい時
- 「ご配慮(ごはいりょ)のほど、よろしくお願いいたします。」 (意味:事情を察して、心を配ってください)
英語で「ご検討のほど」はどう伝える?
グローバルな仕事をしていると、英語メールでも同じようなニュアンスを伝えたくなりますよね。 英語には「ほど」のような曖昧な表現はありませんが、決まり文句があります。
定番のビジネス英語フレーズ
- “Thank you for your consideration.” (直訳:ご検討いただきありがとうございます) メールの結びによく使われる、もっとも一般的な「ご検討のほど、よろしくお願いします」にあたる表現です。まだ検討していなくても、先にお礼を言うことで依頼します。
- “We would appreciate your consideration.” (直訳:ご検討いただけますと感謝いたします) 「〜だと幸いです」に近い、少し丁寧な依頼表現です。
まとめ
最後に、この記事のポイントを振り返りましょう。
- 「ご検討のほど」は、相手に強制しない「クッション言葉」 「検討してください!」という直球を、「考えてもらえますか?」という優しいボールに変える魔法の言葉です。
- 迷ったら「何卒ご検討のほど、よろしくお願いいたします」 これが最強のフレーズです。目上の人でも取引先でも、失礼になることはありません。
- 急ぎの時は使わない 緊急の時は「ご確認をお願いします」など、ストレートな表現を選びましょう。
言葉遣いひとつで、あなたの印象は大きく変わります。 「ご検討のほど」をさらりと使いこなして、相手への気遣いができる素敵なビジネスパーソンとして活躍してくださいね。応援しています!
FAQ(よくある質問)
Q. 「ご検討のほど」は二重敬語ですか? いいえ、二重敬語ではありません。「ご(丁寧語・尊敬語)」+「検討(名詞)」+「のほど(和語の表現)」+「お願いいたします(謙譲語)」という構成なので、文法的に正しい敬語表現です。
Q. チャットツール(Slack/Teams)でも使っていいですか? 使っても問題ありませんが、チャットはメールよりカジュアルな場です。「ご検討のほど〜」だと少し堅苦しく感じる場合もあります。親しい間柄なら「ご検討お願いします」「ご確認いただけますか?」くらいの方が自然なケースも多いです。
Q. 就活のエントリーシートで使ってもいいですか? はい、使えます。自己PRや志望動機の最後に「面接の機会をいただけますよう、ご検討のほどよろしくお願いいたします」と添えると、非常に丁寧で熱意のある印象になります。
Q. 「ご検討の程」と漢字で書いてもいいですか? 間違いではありませんが、ひらがなで「ご検討のほど」と書くことをおすすめします。漢字が続くと文章全体が堅く、黒っぽく見えてしまうため、ひらがなにすることで「柔らかさ」を視覚的にも演出できます。

