メールや手紙の最後によく添えられている、「ご自愛(じあい)ください」という言葉。 なんだか上品で大人の響きがしますよね。
でも、いざ自分が使おうとすると、こんなふうに迷ってしまうことはありませんか?
- 「目上の人に使って失礼じゃないかな?」
- 「『お体をご自愛ください』って書くと間違いなの?」
- 「風邪をひいている上司に送ってもいいのかな?」
実はこの言葉、たった一つのルールさえ知っていれば、相手を温かく気遣うことができる魔法の言葉なんです。
この記事では、言葉のプロである編集部が、以下のポイントをやさしく解説します。
- 一発で解決する「正しい意味」と「絶対NGな場面」
- 今日からコピペで使える「相手別・季節別のメール例文」
- 万が一、間違えて使ってしまった時の対処法
5分後には、あなたも自信を持って「ご自愛ください」を使えるようになっているはずです。 ぜひ、大切な相手を思い浮かべながら読んでみてくださいね。
1分でわかる!「ご自愛ください」の意味と基本
まずは、もっとも基本的な意味と、「これだけは気をつけて!」というルールをおさえましょう。
意味は「あなたの体を大切にしてください」
「ご自愛ください」の意味を辞書的に説明すると、こうなります。
自愛(じあい) 自分自身(自)を大切にする(愛)こと。特に、自分の健康状態に気をつけること。
つまり、「ご自愛ください」は「あなたの体を大切にしてくださいね」「健康に気をつけて過ごしてくださいね」というメッセージなんです。
「愛」という漢字が入っていますが、恋愛的な意味はまったくありません。 男性から女性へ、女性から男性へ、もちろん同性同士でも、ビジネスシーンで安心して使える言葉です。
【重要】すでに体調が悪い人には使いません
ここが、この記事で一番大切なポイントかもしれません。 テストに出るとしたら、間違いなくここです!
「ご自愛ください」は、「今、元気な人」に使う言葉です。
「ご自愛」には「(病気にならないように)気をつけてね」というニュアンスが含まれています。 そのため、すでに風邪をひいている人や、怪我で入院している人に対して使うのは不適切(NG)とされています。
ここが違う!使い分けの例
- 相手が元気なとき
- 🙆♀️「まだまだ寒い日が続きますので、どうぞご自愛ください」
- (意味:風邪をひかないように気をつけてね)
- 相手が風邪をひいているとき
- 🙅♀️「お風邪とのことですが、どうぞご自愛ください」
- 🙆♀️「お風邪とのこと、どうぞお大事になさってください」
- (意味:早く治るようにゆっくり休んでね)
編集者からのワンポイント 「ご自愛ください」は予防の言葉、「お大事に」は治療の言葉、と覚えておくと迷いませんよ。「早く元気になってね」と伝えたいときは、迷わず「お大事に」を選びましょう。
目上の人に使っても大丈夫?
結論から言うと、目上の人に使ってもまったく問題ありません。
「ください」がついているので、「命令しているように聞こえないかな?」と心配になる優しい方もいるかもしれませんね。 でも、「ご自愛ください」は相手の健康を願う定型句として定着しているので、上司や取引先、恩師などに対して使っても失礼にはなりません。
もし、どうしても「ください」の響きが気になる場合は、より丁寧な言い回しに変換してみましょう。
- 基本: どうぞご自愛ください。
- より丁寧: どうぞご自愛くださいませ。
- 最上級: ご自愛のほど、お祈り申し上げます。
ビジネスメールの結びとしては、「ご自愛くださいませ」くらいが、堅苦しすぎず丁寧な印象で使いやすいですよ。
実は間違い?「お体ご自愛ください」の真実
「季節の変わり目ですので、お体ご自愛ください」
これ、実は日本語としては「間違い(重複表現)」と言われているのをご存知ですか? でも、実際にはよく見かけますよね。この「モヤモヤ」をハッキリさせましょう。
なぜ「重複表現」と言われるのか
理由はとてもシンプルです。 「自愛」という言葉の中に、すでに「(自分の)体」という意味が含まれているからです。
- 自愛 = 体を大切にする
- お体ご自愛 = 体を、体を大切にする
このように意味が重なってしまうため、「頭痛が痛い」「馬から落馬する」と同じような重複表現(二重表現)だとされています。
ですので、日本語のルールとして正しいのは、「お体」をつけない形です。
- × お体ご自愛ください
- ◯ (寒暖差の激しい折、)ご自愛ください
間違って使ってしまった時は?
「うわっ、昨日部長へのメールで『お体ご自愛ください』って送っちゃった…!」 と焦ってしまった方、安心してください。
言葉は生き物です。実は現在、「お体ご自愛ください」はかなり広く使われており、受け入れてくれる人が多いのも事実です。 文化庁の調査でも、多くの人が「気にならない」と回答しているケースがあります。
編集者からのワンポイント 正直にお話しすると、私のもとにも「お体ご自愛ください」というメールはよく届きますが、「失礼な人だ!」なんて思ったことは一度もありません。「私の体を気遣ってくれているんだな」という温かい気持ちのほうが先に伝わってきます。
ただ、言葉に厳しい方や、マナーを重視する業界(秘書の方や、出版・教育関係など)では、「おっ、この人は言葉を正しく知っているな」と思ってもらえるチャンスになります。 「知っていてあえて使う」のと「知らずに使う」のは大違い。 基本は「お体」をつけない、と覚えておくのが、大人のマナーとしてスマートですね。
プロが教える「スマートな言い換え」テクニック
「でも、『ご自愛ください』だけだと、なんだか言葉足らずで冷たい感じがする…」 「どうしても『体』という言葉を入れて、健康を気遣っていることを強調したい!」
そんなときは、無理に「自愛」を使わず、別の言葉に言い換えるのがおすすめです。
おすすめの言い換えパターン
- ストレートに伝える
- 「どうぞお体を大切になさってください」
- (これが一番気持ちが伝わりやすく、間違いもありません!)
- 「くれぐれも」を添える
- 「時節柄、くれぐれもご自愛ください」
- (「お体」の代わりに「くれぐれも」や「どうぞ」を足すと、物足りなさが消えます)
- より具体的に気遣う
- 「お忙しいとは存じますが、ご無理をなさいませんよう」
- (相手の忙しさを理解している、という共感が伝わります)
【コピペOK】シチュエーション別「ご自愛ください」の例文集
ここでは、メールの結びや手紙ですぐに使える例文をご紹介します。 相手の名前を入れたり、少しアレンジしたりして使ってみてくださいね。
ビジネスメールの結び(基本・上司・取引先)
仕事のメールでは、用件の後に「クッション言葉(末筆ながら、など)」とセットで使うと、非常に収まりがよくなります。
- 基本パターン(誰にでもOK) 末筆ながら、貴社のますますのご発展をお祈り申し上げますとともに、皆様くれぐれもご自愛ください。
- 忙しい上司や先輩へ ご多忙の折とは存じますが、何卒ご自愛くださいませ。
- 取引先・お客様へ これから忙しい時期を迎えますが、〇〇様におかれましても、どうぞご自愛ください。
季節の挨拶(暑中見舞い・寒中見舞い・年賀状)
「ご自愛ください」は、季節の変わり目や、気候が厳しい時期にこそ真価を発揮します。
- 夏(暑中見舞いなど) 暑さ厳しき折、くれぐれもご自愛ください。
- 冬(寒中見舞い・年末) 寒冷の候、風邪など召されませぬようご自愛ください。
- 季節の変わり目(春・秋) 季節の変わり目ですので、体調を崩されませぬようご自愛ください。
手紙やハガキでの一筆
プライベートな手紙や、親しい間柄なら、少し表現を崩すと「自分の言葉」として響きます。
- 親しい恩師や先輩へ 先生におかれましても、どうかご自愛ください。またお会いできる日を楽しみにしています。
- 友人・知人へ まだまだ寒い日が続くけど、ご自愛くださいね。
「ご自愛ください」と言われたら? 好印象な返信マナー
逆に、相手からメールで「ご自愛ください」と言われた時、どう返していますか? 「ありがとうございます」だけで終わらせるのは、少しもったいないかもしれません。
まずは「気遣いへの感謝」を伝える
まずは、自分の健康を気にかけてくれたことへの感謝を伝えます。
- 「お気遣いいただき、ありがとうございます。」
- 「温かいお言葉、嬉しく拝読しました。」
相手の健康も気遣う「結び」の黄金パターン
そして、相手にも同じ言葉(エール)を返すのが大人のマナーです。 「オウム返し」になっても失礼ではありません。「あなたもね」と返すのが自然な会話ですよね。
返信の例文
- シンプルに返す 〇〇様も、どうぞご自愛ください。
- 季節感を添えて返す 〇〇様におかれましても、風邪など召されませぬようご自愛くださいませ。
編集者からのワンポイント 「お互い、健康には気をつけましょうね」という連帯感が生まれるので、私はこの「ご自愛返し」が大好きです。定型文だと思わずに、相手の顔を思い浮かべて打ってみてください。
相手や状況に合わせた「言い換え」リスト
最後に、「ご自愛ください」以外の便利な表現をリストにしました。 状況に合わせて使い分けてみてください。
| 状況・相手 | おすすめの言葉 | 解説 |
|---|---|---|
| すでに体調を崩している相手 | お大事になさってください | 一番の鉄板。「一日も早い回復をお祈りします」と添えるとさらに◎。 |
| 入院中の相手 | ご静養なさってください | ゆっくり休んでください、というニュアンス。「治療に専念してください」という意味合いです。 |
| チャット・親しい相手 | ご無理なさらず | 「ご自愛」だと堅すぎる場合に。「体調には気をつけてね」でもOK。 |
| スピーチ・公的な文書 | ご健勝(けんしょう)をお祈り申し上げます | 健康で元気なことを「健勝」と言います。かなりフォーマルな表現です。 |
まとめ
「ご自愛ください」について、最後にもう一度おさらいしましょう。
- 意味は「(元気な相手に)風邪などをひかないよう、体を大切にしてください」。
- すでに体調が悪い人には「お大事に」を使う。
- 「お体ご自愛」は重複表現なので避けるのが無難(でも、そこまで目くじらを立てなくてもOK)。
- 返信する時は、相手の健康も願い返すと素敵。
言葉のルールはもちろん大切ですが、一番大切なのは「相手を思いやる気持ち」です。
「寒くなってきたけど、あの人元気かな?」 そう思った時に、メールの最後にそっと「ご自愛ください」と添えてみる。 それだけで、あなたのメールは単なる業務連絡から、心の通った手紙に変わります。
ぜひ今日から、自信を持って使ってみてくださいね。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「ご自愛ください」は目下の人(部下や後輩)に使ってもいいですか? A. はい、使えます。ただし、かなり丁寧な表現なので、普段接している部下には「体調に気をつけてね」「無理しないでね」と言うほうが、距離感が近く親しみやすいでしょう。
Q2. 「ご自愛専一(せんいつ)」という言葉を見かけましたが、どういう意味ですか? A. 「専一」は「それだけを第一に考える」という意味です。「ご自愛専一になさってください」は、「何よりもまず、自分の体を大切にすることだけを考えてください」という、非常に強い思いやりのこもった表現です。
Q3. メールの「件名」に入れてもいいですか? A. 避けたほうが無難です。件名は「要件(例:◯◯の会議について)」を書く場所です。気遣いの言葉は、メールの「本文の最後(結び)」に入れるのがもっともスマートです。
Q4. 英語で「ご自愛ください」は何と言いますか? A. “Please take care of yourself.” がもっとも一般的です。よりシンプルに “Take care.” と言うことも多いですね。

