「最近、仕事や勉強に慣れてきたけど、なんだかやる気が出ないなぁ…」 「失敗するのが怖くて、新しいことに挑戦できなくなっちゃった」
そんなふうに感じて、モヤモヤしていませんか?
そんな時に思い出してほしいのが、「初心(しょしん)忘(わす)るべからず」という言葉です。 座右の銘としても大人気なので、きっと皆さんも一度は聞いたことがあるはず。でも実はこの言葉、「最初の頃のやる気を思い出そう!」という意味だけではないって、知っていましたか?
実はもっと深く、もっと実践的な、人生をアップデートするための最強のアドバイスが隠されているんです。
この記事では、室町時代の天才・世阿弥(ぜあみ)が遺した本来の意味を、中学生でもわかるようにやさしく解説します。
この記事でわかること
- 多くの人が勘違いしている?「初心」の本当の意味
- 人生には3回ある! 成長し続けるための「3つの初心」
- 明日から使える! 場面別の例文や英語表現
読み終わる頃には、今のスランプや不安が「成長のチャンス」に見えてくるはずですよ。それでは、言葉の森へ一緒に入っていきましょう!
実は勘違い?「初心忘るべからず」の本当の意味
「初心忘るべからず」と聞くと、どんな意味をイメージしますか? 多くの人が、次のように考えているのではないでしょうか。
一般的に使われる意味(最初の決意・意欲)
もっとも広く知られているのは、「物事を始めたばかりの頃の、純粋で謙虚な気持ちや意気込みを忘れてはいけない」という解釈です。
- 「入学した時の、あのワクワク感を思い出そう!」
- 「入社した日の、がむしゃらな気持ちを忘れないようにしよう!」
このように、慣れからくる「慢心(まんしん)」や「中だるみ」を戒(いまし)めるために使われます。 もちろん、この使い方は間違いではありません。初心に帰ってフレッシュな気持ちを取り戻すのは、とても素敵なことです。
でも、この言葉の生みの親である世阿弥(ぜあみ)が伝えたかったことは、これだけではありませんでした。もっと厳しく、そして深いメッセージが込められていたのです。
世阿弥が伝えたかった「深い意味」とは?
この言葉は、今から600年ほど前に活躍した能楽師(のうがくし)・世阿弥が書いた『花鏡(かきょう)』という本に出てきます。
世阿弥が言いたかった「初心」とは、単なる「やる気」のことではありません。 実は、「未熟だった頃の、芸が下手で惨(みじ)めだった自分自身」のことなのです。
初心者の頃って、何もできなくて恥をかいたり、先輩に怒られて悔しい思いをしたりしますよね。世阿弥は、「その時の『みっともない自分』や『苦労した経験』を絶対に忘れてはいけない」と説きました。
なぜ、そんな辛い過去を覚えておく必要があるのでしょうか? それは、「あの頃の未熟な自分に戻りたくない!」と思うことこそが、芸を磨き続ける一番の原動力になるからです。
- 一般的な解釈: 「始めた頃のキラキラした気持ち」を思い出そう(プラスの感情)
- 本来の意味: 「何もできなくて未熟だった自分」を直視しよう(マイナスの経験を糧にする)
つまり、「今の自分は昔より成長している」と正しく認識しつつ、「油断したらあの頃の未熟な自分に戻ってしまうぞ」と自分を戒めること。これこそが、一流であり続けるための秘訣なんですね。
【編集者からのワンポイント】
「恥をかいた経験」こそが宝物!
誰でも、失敗したことや恥ずかしい過去は忘れてしまいたいものです。でも、世阿弥先生は「それを捨てちゃダメだ!」と言っています。
「あの時、失敗して顔から火が出るほど恥ずかしかったな…」 「何もわからなくて、質問するのも怖かったな…」
そんなほろ苦い記憶こそが、今のあなたを支える土台になっています。「初心」とは、今の自分をチェックするための「ものさし」のようなものなのかもしれませんね。
人生には3回ある!世阿弥が説いた「3つの初心」
さて、ここからが本題です。 実は世阿弥は、「初心は若い時だけのものではない。人生には3つの初心がある」と言っています。
年齢や経験を重ねても、その時々にぶつかる「壁」こそが初心。これを乗り越え続けることこそが人生だと説いているのです。あなたは今、どのステージにいますか?
①是非の初心(ぜひのしょしん)|若手時代の試練
時期: 20代〜30代前半(習い始め、新入社員)
これは、「未熟さゆえの失敗や試練」のことです。 若い頃は、何が良いこと(是)で何が悪いこと(非)かもよくわかりません。とにかく一生懸命やってみて、失敗して、少しずつ覚えていく時期です。
世阿弥は、「この時期の未熟な経験を忘れてはいけない」と言います。なぜなら、将来自分がベテランになった時、この時期の苦労を覚えていれば、後輩の気持ちもわかるし、調子に乗って失敗することもなくなるからです。
- 現代でいうと…
- 新入社員が電話応対で失敗して落ち込むこと。
- 部活に入ったばかりで、練習についていけず悔しい思いをすること。
②時時の初心(じじのしょしん)|中堅時代の壁
時期: 30代〜50代(中堅社員、リーダー)
これは、「その年齢や経験に応じた、新しい課題」のことです。 ある程度仕事に慣れてきても、昇進したり、新しいプロジェクトを任されたりしますよね。そのたびに、私たちはまた「初心者」に戻るのです。
「昔取った杵柄(きねづか)」だけで勝負せず、「今の自分にできるベストは何か?」を常に新しく工夫し続けること。それが「時時の初心」です。
- 現代でいうと…
- プレイヤーとしては優秀だったけど、管理職になったら部下の指導がうまくいかない時。
- 転職して、前の会社でのやり方が通用しなくて戸惑う時。
③老後の初心(ろうごのしょしん)|ベテランの挑戦
時期: 50代以降(ベテラン、定年後)
これは、「老境に入ってもなお、新しいことに挑む心」のことです。 「もう歳だから…」と諦めるのではなく、その年齢だからこそ出せる「味」や「深み」を追求すること。
世阿弥は言います。「命が終わるまで、初心を忘れてはいけない」。つまり、人間は死ぬまで成長できるということです。かっこいいですよね!
- 現代でいうと…
- 定年退職後に、新しい趣味やパソコン教室に通い始めること。
- ベテラン職人が、今の時代に合わせて新しい道具を取り入れてみること。
【図解】あなたの今のステージはどこ? 3つの初心早見表
| 種類 | 時期 | 現代のイメージ | 心構え |
|---|---|---|---|
| 是非の初心 | 若手・新人 | ガムシャラ期 | 「失敗や恥ずかしさを忘れない!」 |
| 時時の初心 | 中堅・リーダー | 働き盛り期 | 「慣れを捨てて、毎回工夫する!」 |
| 老後の初心 | ベテラン・晩年 | 完成期 | 「歳をとっても、新しい自分を探す!」 |
【編集者からのワンポイント】
「スランプ」は「次の初心」のサインかも?
もし今、あなたが「なんだかうまくいかないな…」と壁にぶつかっているなら、それは新しいステージ(時時の初心)に入った証拠かもしれません。 「自分はダメだ」と落ち込む必要はありません。「おっ、新しい初心が来たな!」と前向きに捉えてみましょう。
明日から使える!「初心忘るべからず」の例文とシチュエーション
意味がわかったところで、実際にこの言葉を使ってみましょう。 自分のスローガンにするもよし、スピーチで使うもよし。ただし、使う相手には注意が必要です!
ビジネスシーンでの使い方(朝礼・スピーチ・決意表明)
自分の決意を語る時に使うと、謙虚で前向きな印象を与えられます。
- 昇進・異動の挨拶で 「この度、リーダーを拝命しました。入社当時の初心を忘れず、また一から学ぶつもりでチームに貢献したいと思います。」
- プロジェクトのキックオフで 「慣れてきた今だからこそ、初心忘るべからずの精神で、基本確認を徹底していきましょう。」
座右の銘としての活かし方(履歴書・自己PR)
就職活動や自己紹介で「座右の銘」として使うのもおすすめです。
- 面接でのアピール 「私の座右の銘は『初心忘るべからず』です。失敗を恐れずに挑戦し、そこから学んだ教訓を次に活かす姿勢を大切にしています。」
【注意】目上の人に使う時は要注意!
ここが一番の注意点です! 「初心忘るべからず」には、「未熟さを忘れるな(=お前は未熟だ)」というニュアンスが含まれる場合があります。
そのため、上司や先輩に対してアドバイスとして使うのは失礼にあたります。
- ❌ NG例: 「部長、最近ミスが多いですよ。初心忘るべからずで頑張ってください!」 (→「お前ごときに言われたくない!」と怒られる可能性大です…)
- ⭕ OK例: あくまで「自分自身」に向けて使う言葉だと覚えておきましょう。
英語や類語で言い換えると?
「初心」の精神は、日本だけでなく世界共通の成功法則です。 かっこいい英語表現も覚えておくと、知識の幅が広がりますよ。
英語表現:Stay hungry, stay foolish
- Stay hungry, stay foolish. (ハングリーであれ、愚かであれ)
これは、Appleの創業者スティーブ・ジョブズが、スタンフォード大学の卒業式で行った有名なスピーチの言葉です。 「現状に満足するな(ハングリーであれ)」「常識にとらわれず、バカだと思われるくらい新しいことに挑戦しろ(愚かであれ)」という意味で、世阿弥の「初心」に通じるものがありますね。
- Beginner’s mind (初心者の心)
実は、禅(ZEN)の言葉として”Shoshin”(初心)は海外でも知られています。「専門家になればなるほど可能性は狭まるが、初心者の心には多くの可能性がある」という意味です。
似ていることわざ
- 勝って兜(かぶと)の緒(お)を締めよ (成功した時こそ、油断せずに気を引き締めなさい)
- 油断大敵(ゆだんたいてき) (気を抜くことが一番の敵だ)
【FAQ】よくある質問コーナー
最後に、読者の皆さんが気になる疑問にQ&A形式でお答えします。
Q1. 「初心忘るべからず」は誰の言葉ですか? A. 室町時代の能楽師、世阿弥(ぜあみ)の言葉です。彼の書いた能の理論書『花鏡(かきょう)』に記されています。
Q2. 「初心」って具体的に何のことですか? A. 一般的には「最初の意気込み」ですが、本来は「未熟だった頃の自分」や「新しいことに直面した時の試練」を指します。
Q3. 読み方は「わする」?「わすれる」? A. 原文は古文なので「わするべからず」と読みます。ただ、現代の会話で使う時は「わすれるべからず」と言っても間違いではありませんが、「わする」の方が教養があるように聞こえますよ。
まとめ
いかがでしたか? 「初心忘るべからず」は、単に「昔を思い出して懐かしむ」言葉ではありませんでした。
- 未熟だった頃の悔しさを忘れず、今の自分を戒めること。
- いくつになっても、新しい壁(初心)に挑戦し続けること。
そう考えると、なんだか勇気が湧いてきませんか?
私たちは生きていれば、何度も「初心者」になります。 新しい学校、新しい職場、新しい趣味、新しい役割…。
そのたびに「うまくできない自分」に出会うかもしれませんが、それこそが成長のチャンスです。 「今の自分は、新しいステージの初心者だ」。 そう胸を張って、今日からまた新しい一歩を踏み出していきましょう!

