「鬼は外! 福は内!」
2月の節分の日になると、元気な声が聞こえてきますよね。子供の頃から親しんでいる行事ですが、ふと子供にこんなことを聞かれて、答えに詰まったことはありませんか?
「ねえ、どうして豆をまくの?」 「鬼って本当にいるの?」 「夜にやらないとダメなの?」
なんとなく「悪いものを追い払う儀式」だとは知っていても、その由来や正しいルールを詳しく説明できる人は、意外と少ないものです。
そこで今回は、大人なら知っておきたい「鬼は外」の本当の意味と、一般的に言われている豆まきの作法について、わかりやすく解説します。
この記事を読むと、こんなことがわかります。
- 「鬼は外」という言葉に込められた深い意味と由来
- なぜ「豆」でなければならないのか(他のものではダメな理由)
- 「いつ」「誰が」「どうやって」まくのが正解か、具体的な手順
今年の節分は、意味をしっかり噛み締めながら、家族みんなで心晴れやかに豆をまきましょう!
「鬼は外」の意味と由来|なぜ豆をまくの?
そもそも、なぜ節分に「鬼」が出てきて、それを追い払うのでしょうか? まずは、この言葉のルーツと、豆に込められた願いについて紐解いていきましょう。
「鬼は外、福は内」に込められた願い
節分とは、その名の通り「季節を分ける」という意味があります。 日本では昔から、季節の変わり目(立春、立夏、立秋、立冬)には、悪い気(邪気)が入り込みやすいと考えられていました。
特に、新しい1年の始まりとも言える「立春」の前日は、大晦日のように重要な日。 節分は“立春の前日”で、立春の日付は年により変動します(例:2026年の立春は2月4日)。
そこで、新しい春を迎える前に、冬の間に溜まった悪いもの(邪気)を追い払い、幸せ(福)を招き入れようとして行われるのが、この豆まきなのです。
ここで言う「鬼」とは、角の生えた恐ろしい怪物だけを指すのではありません。 昔の人は、目に見えない「病気」「災害」「飢饉(ききん)」などの悪い出来事を、すべて「鬼」の仕業だと考えていました。
つまり、「鬼は外!」という掛け声は、単に怪物を追い払っているのではなく、「病気や不幸は出ていってくれ! 家族みんなが健康で幸せに過ごせますように!」という、切実な願いが込められたお祈りの言葉なんですね。



「鬼」という漢字の語源は、「隠(おぬ)」だと言われています。「隠れていて見えないもの」、つまり「得体の知れない怖いもの」や「死者の霊」などを指していました。 現代風に言えば、「ウイルス」や「ネガティブな気持ち」も、一種の「鬼」と言えるかもしれませんね。
ルーツは中国? 鬼やらい(追儺)との関係
豆まきの歴史は古く、よく「中国から伝わった追儺(ついな)がルーツ」と言われます。
確かに「鬼やらい(追儺)」は中国由来の疫病払いの儀礼で、日本でも8世紀初頭の記録が確認されます。かつては桃の弓と葦(あし)の矢を使って悪鬼を追い払っていました。 一方で、史料上の「節分」の儀礼とは性格が異なる面もあり、現在の豆まきスタイルは、長い歴史の中で様々な習俗が混ざり合って成立したものと考えられています。
室町時代ごろから民間にも広まり、庶民でも手に入りやすい「豆」を使って鬼を払うスタイルへと変化していきました。
なぜ「豆」なの? 意外な語呂合わせ(俗説)
では、なぜ弓矢から「豆」に変わったのでしょうか? そこには、日本人特有の言葉遊び(語呂合わせ)や、穀物への信仰が関係しているという説が広く知られています。
- 魔を滅する=「魔滅(まめ)」 豆には邪気を払う力があるとされ、「魔(ま)」を「滅(め)っする」に通じると考えられました。
- 魔の目=「魔目(まめ)」 「鬼の目(魔の目)」に豆を投げつけて退治する、という意味もあります。
五穀(米、麦、あわ、きび、豆)の中でも、豆は粒が大きく、投げたときに「パチッ!」と良い音がしますよね。この音も邪気を払うのに効果的だと考えられたようです。 ※これらはあくまで俗説(言い伝え)ですが、言葉に願いを込める日本らしい文化と言えますね。
【重要】必ず「炒った豆」を使いましょう!
豆まきに使う豆は、必ず「炒った大豆(福豆)」でなければなりません。生の豆はNGです。 これには、とても重要な理由があります。
もし、まいた生の豆から「芽」が出てしまったらどうなるでしょうか? 「邪気(鬼)が芽を出す」ことになり、非常に縁起が悪いとされているのです。
そのため、火で炒って「魔の目を射る(炒る)」ことで、鬼を完全に封じ込める必要があります。 スーパーで売られている「福豆」は基本的に炒ってあるので安心ですが、もしご家庭で大豆を用意する場合は、必ずフライパンなどで炒ってから使いましょう。



私も子供の頃、生の豆を庭にまいてしまい、後でお母さんに怒られた記憶があります(笑)。 「炒る=射る」という語呂合わせも有名ですが、実用面でも「一度火を通した豆はもはや芽が出ない=悪いことが起きない」という、鉄壁のお守りになるのです。
【保存版】節分の豆まきガイド
「鬼は外」の意味がわかったところで、次は実践編です。 地域やご家庭によってやり方は様々ですが、ここでは一般的な作法をご紹介します。
いつやる? ベストな時間帯は「夜」
保育園や学校の行事ではお昼に豆まきをすることが多いですが、本来、家庭で行う場合のベストな時間帯は「夜」です。
鬼(邪気)は、太陽が沈んで暗くなってからやってくると信じられていました。 時刻で言うと「丑寅(うしとら)の刻」、つまり深夜帯が鬼の活動時間帯とされることもあります。鬼が「牛(うし)の角」と「虎(とら)のパンツ」を身につけているのは、この「丑寅」の方角(北東)から来るからなんですよ。
とはいえ、真夜中に大声を出すわけにはいきませんよね。 現代の家庭では、「家族全員が揃った夕食後の時間帯」に行うのがおすすめです。一家団欒(だんらん)の後に、みんなで厄払いをしましょう。
誰がまく? 本来は「家長」だけど…
昔の習わしでは、豆をまくのは「一家の主人(家長)」や、その年の干支生まれの男性である「年男(としおとこ)」の役目でした。 彼らが家の代表として、邪気を払うパワーを持っていると考えられていたからです。
しかし、現代ではそこまで厳密にこだわる必要はありません。 むしろ、「家族全員で参加すること」に意味があります。 お父さんが鬼役をやって子供たちが豆をまく、というスタイルが一般的ですが、役割を交代しながら全員が豆をまくことで、家族みんなの厄を払うことができます。



「お父さん=鬼」というイメージが定着していますが、たまにはお母さんが鬼役をやったり、子供が鬼のお面をかぶったりしても楽しいですよ。 大切なのは「家の中から悪いものを出すイメージ」を家族で共有することです。
手順とルールのチェックリスト
「豆まきなんて、ただ投げればいいんでしょ?」と思っていませんか? 実は、「鬼を追い出して、福を逃さない」ための手順があります。
- 【準備】豆(福豆)を用意する 炒った大豆を「枡(ます)」に入れます。枡がない場合は、紙で作った箱やお椀でもOKです。「神棚」にお供えしてから使うと、より神聖な力が宿ると言われています。
- 【開始】家の奥の部屋からスタート 玄関から一番遠い部屋から始め、最後が玄関になるように移動していきます。
- 【鬼は外】窓を開けてからまく 一般的には、戸や窓を開けて『鬼は外』とまき、鬼の逃げ道を作る方法が多いです。窓が閉まっていると、鬼が部屋の中に残ってしまうと考えるからです。
- 【福は内】すぐに窓を閉めてからまく 鬼を追い出したら、すぐに窓をピシャリと閉めます(鬼が戻ってこないように)。その後、部屋の中に向かって「福は内!」とまきます。 ※地域や住環境によっては、窓を開けずに儀式的に行う場合もあります。
- 【終了】最後は玄関で 各部屋を回ったら、最後に玄関で豆をまき、しっかり戸締まりをして終了です。



マンションやアパートで「外に豆をまけない(共用廊下やベランダが汚れる)」という場合は、小袋に入ったままの豆を投げたり、窓を開ける動作だけして声に出す「エア豆まき」でも十分効果があります。大切なのは「追い出すぞ!」という気持ちです。
余った豆はどうする? 年齢+1個食べる意味
豆まきが終わったら、最後にみんなで豆を食べます。 これを「年取り豆」と言います。
食べる数は、地域によって以下の2つのパターンがあります。
- 自分の年齢と同じ数
- 自分の年齢+1個
「+1個」の由来は、昔の「数え年(かぞえどし)」という考え方に基づいています。 昔は生まれた時を1歳とし、お正月(立春)を迎えるたびにみんな一斉に年をとると考えていました。そのため、「今の年齢+1個(新年の分)」を食べることで、「新しい年も健康で丈夫に過ごせますように」と願うのです。
どちらの数え方でも間違いではありませんので、ご家庭のルールに合わせて美味しくいただきましょう。 もし、「年齢の数が多くて食べきれない…」という場合は、無理しなくて大丈夫。 「福茶(ふくちゃ)」にして飲むのがおすすめです。 湯呑みに「豆を3粒」「梅干し」「塩昆布」を入れてお湯を注ぐだけ。香ばしくて美味しいお茶になりますよ。
子供に教えたい! 5色の鬼と「心の鬼」
節分の鬼には、赤や青などいろんな色がいますよね。 実はこれ、ただのカラーバリエーションではなく、仏教の教えに基づいた「人間の悪い心(煩悩)」を表していると言われています。
子供に「どの鬼を退治したい?」と聞きながら、心のお掃除を促してみましょう。
赤・青・黄… 鬼の色には意味がある
| 鬼の色 | 表している心(煩悩) | 意味・メッセージ |
|---|---|---|
| 赤鬼 | 欲望・貪欲 | 「あれも欲しい、これも欲しい」というワガママな心。 |
| 青鬼 | 怒り・憎しみ | すぐにイライラしたり、お友達に意地悪したりする心。 |
| 黄鬼 | 甘え・執着 | 約束を守れなかったり、「ま、いっか」と自分に甘えたりする心。 |
| 緑鬼 | 不摂生・怠慢 | ダラダラしてやるべきことをやらない、不健康な心。 |
| 黒鬼 | 疑い・愚痴 | 「どうせ無理」と卑屈になったり、人を疑ったりする心。 |
「自分の中の鬼」を追い出そう
子供にとって、目に見えない「邪気」を理解するのは難しいものです。 そんなときは、この色の意味を使ってこう話しかけてみてください。
「〇〇ちゃんの中には、泣き虫鬼や、お片付けイヤイヤ鬼はいないかな?」 「お母さんは、つい食べすぎちゃう食いしん坊鬼を追い出そうかな!」
こんなふうに、「自分の直したいところ=心の鬼」と捉えることで、節分がただのイベントではなく、自分を見つめ直す良い機会になります。



小さなお子さんが鬼のお面を怖がりすぎてしまう時は、無理に使わなくて大丈夫です。「鬼さんは、みんなのニコニコ笑顔が嫌いなんだって!」と伝えて、楽しく豆まきをして笑い飛ばすのが一番の厄払いになりますよ。
「鬼は外」と言わない地域も? 節分トリビア
日本は広いもので、地域によっては「鬼は外」と言わない場所があります。 最後に、誰かに話したくなる節分のトリビアをご紹介します。
まさかの「鬼は内」? 優しい地域の話
「鬼だって改心すれば神様になれる」 「鬼を祀(まつ)っている神社がある」
そんな理由から、「鬼は内、福は内」や「福は内、鬼も内」という掛け声で豆をまく地域があります。 例えば、群馬県の鬼石(おにし)地区などが有名です。「鬼」という字が地名に入っているため、鬼を大切にしているんですね。 悪いものを排除するだけでなく、受け入れて良いものに変えていく。なんとも日本らしい、懐の深い考え方だと思いませんか?
最強の苗字「ワタナベさん」は豆まき不要説
あなたの苗字は「渡辺(わたなべ)」さんですか? もしそうなら、豆まきをしなくていい特権階級かもしれません!
平安時代、源頼光(みなもとのよりみつ)の家来に、渡辺綱(わたなべのつな)という非常に強い武士がいました。彼は京都の一条戻橋で、恐ろしい鬼の腕を刀でスパッと切り落としたという伝説を持っています。
それ以来、渡辺綱の鬼退治伝説にちなみ、「渡辺姓の家には鬼が近寄らない」という言い伝えがあります(※地域やご家庭によって異なります)。 そのため、ワタナベさんの家では豆まきをしない、あるいは「鬼は外」と言わなくても良い、とされることがあるのです。
まとめ|節分で心も体もリフレッシュしよう
今回は、「鬼は外」の本当の意味や、豆まきの作法についてご紹介しました。
記事のポイントをまとめます。
- 「鬼は外」は、病気や心の弱さを追い払い、幸せを願うポジティブな言葉。
- 豆は必ず「炒った豆」を使い、夜に家族みんなでまくのがベスト。
- 一般的には「窓を開けて鬼を出し、閉めて福を閉じ込める」手順が多い。
- 自分の中の「心の鬼(イライラや怠け心)」と向き合うチャンスにする。
節分は、厳しい冬を乗り越え、暖かい春を迎えるための大切な区切りです。 「鬼は外! 福は内!」と大きな声を出すだけでも、不思議と気分がスッキリして、ストレス発散になりますよ。
今年の節分は、ぜひご家族で楽しみながら、心の中の鬼を退治して、清々しい気持ちで新しい春(立春)を迎えてくださいね。
よくある質問(FAQ)
Q. 落花生(ピーナッツ)をまいてもいいですか? A. はい、大丈夫です! 北海道、東北、信越地方などの雪が多い地域では、掃除が楽で、拾って食べても衛生的な「落花生」をまくのが主流です。殻付きのまままきましょう。地域や家庭のルールに合わせて楽しんでください。
Q. 恵方巻きと豆まき、どっちが先ですか? A. 決まったルールはありませんが、「豆まきが先」派が多いようです。 一般的には、豆まきで邪気を払って身を清めてから、恵方巻きを食べて福を体に取り込む、という流れが自然とされています。ただ、夕食として恵方巻きを食べてから、食後のイベントとして豆まきをしても全く問題ありません。
Q. 「鬼は外」と言う回数は決まっていますか? A. 一般的には2回ずつですが、地域によります。 「鬼は外、鬼は外、福は内、福は内」と2回ずつ繰り返すのが一般的ですが、地域や神社によっては3回だったり、回数が違ったりします。心を込めて言えば、回数にこだわりすぎる必要はありません。
Q. 豆が嫌いで食べられません。どうしたらいいですか? A. 無理に食べなくてOKです。 「福茶」にして飲むか、あるいは「豆を食べたことにして」お守りとして懐紙に包んで持っておく、という方法もあります。最近では、豆の代わりにボーロや個包装のチョコをまくご家庭も増えていますよ。

