「取引先の人にわざわざ自社まで来てもらうことになったけれど、メールでどうやってお願いすればいいんだろう?」
「相手が到着した時の第一声は、なんて言うのが正解?」
ビジネスシーンや、目上の方とのやり取りで、相手に移動をお願いする場面は少なくありません。そんな時、どう伝えれば「申し訳ない」という気持ちや「感謝」の心がしっかり伝わるのか、悩んでしまうことはありませんか?
この記事では、そんな時に大活躍する「ご足労(ごそくろう)をおかけします」という言葉について、コトバノモリの編集者が中学生でもわかるように、やさしく丁寧に解説します。
この記事を読むと、以下の3つのことがわかります。
- 「ご足労」の本当の意味と、言葉に込められた温かい気持ち
- 【来てもらう前・到着した時・帰った後】のシーン別、そのまま使える例文
- 思わずやってしまいがちなNGな使い方と、言われた時のスマートな返し方
相手への思いやりが伝わる言葉の魔法を、一緒に身につけていきましょう!
「ご足労(ごそくろう)をおかけします」の本当の意味とは?
結論から言うと、「ご足労をおかけします」とは、「本来ならこちらから出向くべきところを、わざわざ足を運ばせて(来させて)しまい、申し訳ありません。そして、ありがとうございます」という意味を持つ、とても丁寧で思いやりにあふれた言葉です。
単に「来てください」と言うよりも、はるかに相手への敬意が伝わるマジックワードなんですよ。言葉を少し分解して、その成り立ちと込められた気持ちを詳しく見ていきましょう。
「足労」=「足を疲れさせること」
「足労(そくろう)」という言葉は、文字通り「足」と「労(つか)れる」という漢字から成り立っています。
つまり、「足労」とは「歩いて(移動して)足を疲れさせること」や「わざわざ出向くという手間」を意味します。
そこに、相手への敬意を表す「ご」をつけて「ご足労」とし、「負担をかける」という意味の「おかけします」を繋げることで、「あなたの足を疲れさせるような負担をかけてしまいます」という、へりくだった(自分を下げて相手を立てる)表現になるのです。
込められているのは「申し訳なさ」と「感謝」の気持ち
この言葉を使う時に一番大切なのは、言葉の裏にある「心」です。
ビジネスや人間関係の基本として、「お願いをする側」が「お願いをされる側」のところへ出向くのがマナーとされています。しかし、状況によっては、相手に来てもらわなければならないこともありますよね。
- 「遠いところから、時間をかけて来てくれる」
- 「交通費を使って、わざわざ足を運んでくれる」
「ご足労をおかけします」という言葉には、「本来なら私が行くべきなのに、あなたの大切な時間と労力を使わせてしまって本当に申し訳ない」という【謝罪(恐縮)】の気持ちと、「それなのに来てくれて嬉しい」という【感謝】の気持ちの両方が、ギュッと詰まっているのです。
「ご足労をおかけします」と「ご足労いただき」の違い
「ご足労」を使った表現には、大きく分けて「ご足労をおかけします」と「ご足労いただき(まして)」の2つがあります。この2つは、「相手が移動する前か、後か」という時間軸によって使い分けます。
| 言葉の表現 | 使うタイミング(時間軸) | 意味合い |
|---|---|---|
| ご足労をおかけします | 相手が来る前(未来) | 「これから来てもらう負担をかけます」とお願いする時 |
| ご足労いただき(まして) | 相手が来た時・帰った後(過去・現在) | 「すでに来てくれたこと」に対してお礼を言う時 |
例えば、メールで「明日、弊社までご足労をおかけしますが、よろしくお願いいたします」と事前に伝え、当日相手が到着したら「本日は遠いところ、ご足労いただきましてありがとうございます」と迎えるのが、とてもスマートで美しい流れです。
💡 コトバノモリ編集者のワンポイントアドバイス
「ご足労」は、とても丁寧な言葉ですが、使いすぎには少し注意が必要です。何度も「ご足労、ご足労…」と繰り返すと、かえって堅苦しく、少しよそよそしい印象を与えてしまうことも。
メールの文頭で一度使ったら、帰り際は「本日はお越しいただき、ありがとうございました」など、少し柔らかい表現に言い換えるのも、コミュニケーションの上級テクニックですよ。
【シーン別】「ご足労をおかけします」の温かい使い方と例文集
言葉の意味がわかったところで、次は実践編です。
「相手にお願いする時」「相手が到着した時」「帰った後」の3つのシーンに分けて、そのまま使える例文と、心を込めるためのちょっとしたコツをご紹介します。
シーン1:相手に「来てほしい」とお願いする時(来社前)
相手に「来てください」とストレートに言うのは、少し命令されているように感じてしまうことがありますよね。そんな時、「ご足労をおかけしますが」をクッション言葉(本題の前に置いて、言葉の印象を柔らかくする言葉)として使います。
さらに、「恐れ入りますが」「お忙しいところ」などの言葉を添えると、より一層の気遣いが伝わります。
【メールでのお願い例文】
件名:次回のお打ち合わせにつきまして(株式会社〇〇 〇〇)
〇〇株式会社
〇〇様
いつも大変お世話になっております。
株式会社〇〇の〇〇でございます。
次回のお打ち合わせにつきまして、実機をご覧いただきながら
ご説明させていただきたく存じます。
誠に恐縮ではございますが、〇月〇日(〇)〇時頃に
弊社までご足労をおかけしてもよろしいでしょうか。
お忙しいところご足労をおかけし申し訳ございませんが、
何卒よろしくお願い申し上げます。
シーン2:相手が到着した時・顔を合わせた時(来社時)
相手が約束の場所に到着した時の第一声は、その日の打ち合わせの雰囲気を決める重要なポイントです。「お待ちしておりました」という歓迎の気持ちとともに、「わざわざ来てくれてありがとう」という労いの言葉をかけましょう。
この時は、すでに相手は足を運んでくれているので、「ご足労いただき(まして)」を使います。
【対面での会話例】
- 基本の挨拶「本日はお忙しい中、弊社までご足労いただきまして、誠にありがとうございます。」
- 遠方から来てくれた場合「本日は遠方よりご足労いただき、本当にありがとうございます。道中、迷われませんでしたか?」
✨ さらに心を掴む!お天気気遣いテクニック ✨
雨の日や、とても暑い日に来てくれた方には、お天気に触れる一言を添えると、「自分のことを気遣ってくれているんだな」と、とても温かい気持ちになってもらえます。
- 雨や雪の日に「本日はお足元の悪い中、ご足労いただきましてありがとうございます。お洋服など濡れませんでしたか?」
- 夏の暑い日に「本日は厳しい暑さの中、ご足労いただきありがとうございます。どうぞ冷たいお茶で喉を潤してください。」
シーン3:相手が帰る時・帰った後のお礼(帰社時・後日)
打ち合わせが無事に終わり、相手が帰る時や、後日お礼のメールを送る時にも、「ご足労」の言葉は活躍します。最後まで丁寧な対応をすることで、あなたへの信頼感はグッと高まります。
【帰り際のお見送りの言葉】
- 「本日は貴重なお時間をいただき、またご足労いただきまして、誠にありがとうございました。お気をつけてお帰りくださいませ。」
【後日送るお礼のメール例文】
件名:本日はありがとうございました(株式会社〇〇 〇〇)
〇〇株式会社
〇〇様
いつも大変お世話になっております。
株式会社〇〇の〇〇でございます。
本日はお忙しい中、弊社までご足労いただきまして、
誠にありがとうございました。
〇〇様から直接貴重なご意見を伺うことができ、
大変有意義な時間となりました。
(中略:打ち合わせの簡単なまとめや今後の予定など)
本来であればこちらからお伺いすべきところ、
お越しいただき重ねてお礼申し上げます。
引き続き、何卒よろしくお願いいたします。
💡 コトバノモリ編集者の失敗談
私が新人の頃、せっかく来てくださったお客様に緊張しすぎて、第一声で「本日はご足労をおかけします!」と元気に言ってしまったことがあります。
すでに「到着している(=過去の行動)」のに「おかけします(=未来の行動)」と言ってしまい、日本語として少しおかしな状況に。お客様は笑って許してくださいましたが、顔から火が出るほど恥ずかしかったです。
皆さんは、「来る前は【おかけします】、来た後は【いただき】」という使い分けを、ぜひ覚えておいてくださいね!
要注意!「ご足労をおかけします」のNGな使い方・失敗談
とても便利な言葉ですが、使い方を間違えると相手に違和感を与えたり、失礼になったりしてしまうケースもあります。ここでは、思わずやってしまいがちな3つのNGな使い方をご紹介します。
NG1:自分が主語になってしまう(「私がご足労します」は間違い!)
「ご足労」は、相手の行動を高める「尊敬語」です。そのため、自分の行動に対して使うことは絶対にできません。
× 悪い例:「明日は、私がそちらへご足労いたします」
〇 良い例:「明日は、私がそちらへお伺いいたします(または参ります)」
自分が相手のところへ行く時は、自分をへりくだる「謙譲語」である「伺う」「参る」を使うのが正解です。
NG2:社内の身内(同僚や部下)に対して使ってしまう
「ご足労」は、基本的にお客様や取引先など、「社外の人」に対して使う言葉です。同じ会社で働く同僚や部下に対して使うと、大げさすぎて不自然に聞こえてしまいます。
× 悪い例:(同僚に)「会議室までご足労いただきありがとう」
〇 良い例:(同僚に)「会議室まで来てくれてありがとう(またはお疲れ様です)」
ただし、社内の人間であっても、社長や役員、別部署のかなり上の上司など、圧倒的に目上の人に対しては「本日は現場までご足労いただき、ありがとうございます」と使っても問題ありません。
NG3:相手が来るか「確定していない」のに使ってしまう
「ご足労をおかけしますが〜」という言葉は、「相手が来てくれること」を前提とした表現です。そのため、まだ相手が来るかどうかわからない段階で使うと、「もう行くことが決定しているの?」と押し付けがましく感じさせてしまう危険があります。
× 悪い例:「来週の打ち合わせですが、弊社までご足労をおかけしますが、いかがでしょうか?」
この場合は、まずは相手が来社可能かどうかを優しく尋ねるのがマナーです。
〇 良い例:「来週の打ち合わせですが、弊社までお越しいただくことは可能でしょうか?」
相手の了承を得てから、「ご足労をおかけしますが、よろしくお願いいたします」と伝えるようにしましょう。
相手から「ご足労いただき〜」と言われた時のスマートな返し方
自分が相手の会社を訪問した時、相手から「本日はご足労いただきまして…」と声をかけられることもよくあります。そんな時、どう返事をすればいいのか迷ってしまいますよね。
謙遜しすぎはNG!まずは素直に受け取る
日本人は謙遜(けんそん:へりくだること)を美徳とする文化があるため、つい「いえいえ、とんでもないです!」と強く否定してしまいがちです。
しかし、「ご足労」という言葉には相手からの「感謝」と「歓迎」の気持ちが込められています。否定しすぎると、せっかくの相手の気遣いをはねのけてしまうことになりかねません。
まずは「とんでもないです」と軽く謙遜した上で、相手の気遣いに対するお礼や、前向きな言葉を続けるのがスマートな大人の返し方です。
対面・電話で言われた時の返し方(会話例)
相手:「本日は遠いところ、ご足労いただきましてありがとうございます。」
- 返し方例1:相手のお招きに感謝する「とんでもないです。本日はお招きいただき(お時間をいただき)、誠にありがとうございます。」
- 返し方例2:自分も来たかったことを伝える「いえいえ、こちらこそ〇〇様にお会いできるのを楽しみにしておりました。」
- 返し方例3:全く苦にならなかったことをアピールする「とんでもないです。駅から近くて、とても分かりやすかったですよ。」
このように、相手の言葉をふんわりと受け止めつつ、「私の方こそ感謝していますよ」という気持ちを添えると、その後の会話がとてもスムーズに進みます。
「ご足労をおかけします」の言い換え・類語表現
いつも同じ言葉ばかり使っていると、少し単調になってしまいますよね。状況や相手との関係性に合わせて、いくつかの表現を使い分けられるようになると、コミュニケーションの幅がグッと広がります。
さらに丁寧に伝えたい時:「お運びいただき」「ご来駕(らいが)賜り」
より改まった場面(結婚式、パーティー、式典など)や、非常に目上の方に対しては、さらに丁寧な言い換え表現があります。
- お運び(はこび)いただき「本日はお忙しい中、会場までお運びいただきまして誠にありがとうございます。」※「ご足労」よりも少し和やかで、上品な印象を与える言葉です。
- ご来駕(らいが)賜り(たまわり)※招待状や案内状など、書面でよく使われる非常にフォーマルな言葉です。「駕」は乗り物を意味し、「わざわざ乗り物に乗って来てくださり」という意味になります。
少し柔らかく伝えたい時:「お越しいただき」「ご来社いただき」
日常的なビジネスのやり取りや、何度か顔を合わせている取引先に対しては、「ご足労」だと少し堅苦しいと感じる場合があります。
- お越しいただき「本日は弊社までお越しいただき、ありがとうございます。」※どんな場面でも使える万能な言葉です。
- ご来社(らいしゃ)いただき「明日はご来社いただけるとのこと、お待ち申し上げております。」※自分の会社に来てもらう時に限定して使います。
手間や時間をかけたことを労う時:「お手数をおかけします」「お手間をとらせて」
相手に「移動」ではなく、「作業」や「時間」を使わせてしまった時の言い換えです。
- お手数(てすう)をおかけします「書類の確認など、お手数をおかけしますがよろしくお願いいたします。」
- お手間(てま)をとらせて「何度もメールでやり取りをしてしまい、お手間をとらせて申し訳ございません。」
よくある質問(FAQ)
最後に、「ご足労」についてよくある疑問をQ&A形式でまとめました。
Q1. 目上の人や取引先に使っても失礼になりませんか?
A. 全く失礼になりません。むしろ最適な言葉です。
「ご足労をおかけします」は、相手への強い敬意と申し訳なさを表す敬語(尊敬語)です。社長や役員、大切なお客様など、目上の方に対して積極的に使っていただいて問題ありません。
Q2. 雨や雪の日に来ていただいた場合、どう添えればいいですか?
A. 「お足元の悪い中」というクッション言葉を添えましょう。
「本日はお足元の悪い中、ご足労いただきまして誠にありがとうございます」と伝えると、相手を労う温かい気持ちがより一層伝わります。
Q3. 「ご足労様です」という言い方は正しいですか?
A. 間違った言葉遣いなので、使わないようにしましょう。
「ご足労様です」という言葉は、実は存在しません。「ご足労」と、目下の相手に使う「ご苦労様です」が混ざってしまった誤用(間違った使い方)です。目上の方に対して使うと大変失礼にあたるため、「ご足労いただきありがとうございます」と正しく伝えましょう。
Q4. オンライン会議(Zoomなど)の時も「ご足労」は使えますか?
A. オンライン会議では使いません。
「足労」は「足を運ぶ(移動する)」という意味なので、移動が発生しないオンライン会議では使いません。この場合は、「本日はお忙しい中、お時間をいただきましてありがとうございます」と言い換えるのが正解です。
まとめ:相手を思いやる「ご足労」の言葉で、温かい人間関係を
「ご足労をおかけします」は、ただ「来てください」と伝えるだけでなく、「あなたの大切な時間と体力を使わせてしまって申し訳ない」という思いやりの心を届ける、素敵な言葉です。
- お願いする時は「ご足労をおかけしますが」
- 来てくれた時は「ご足労いただきまして」
この時間軸の使い分けをマスターするだけでも、あなたの言葉はグッと洗練され、相手に安心感を与えることができるはずです。
言葉づかいは、相手を大切に思う気持ちの表れです。ぜひ明日からのメールや挨拶で、この温かい言葉の魔法を使ってみてくださいね。コトバノモリは、あなたのコミュニケーションがより豊かになることを応援しています!

