お世話になった方へのお礼や、季節のご挨拶で贈り物をする時。「喜んでくれるかな?」とドキドキしながら品物を選び、いざ渡そうとした瞬間に「なんて言って渡せばいいんだろう?」と迷ってしまった経験はありませんか?
そんな時によく耳にするのが「ご笑納(しょうのう)ください」という言葉です。 響きが丁寧で、なんとなく大人の気遣いを感じる素敵な言葉ですよね。
しかし、実はこの「ご笑納ください」、使う相手や場面を間違えると、かえって失礼になってしまうこともある「取り扱い注意」の言葉なのです。
この記事では、編集者として数多くの手紙やビジネス文書を見てきた経験をもとに、「ご笑納ください」の本当の意味や、絶対に失敗しないための正しい使い方を、中学生にもわかるように丁寧にお伝えします。
【この記事でわかること】
- 「ご笑納ください」の正しい意味と、込められた温かい気持ち
- 絶対に使ってはいけない相手と、3つのNGシーン
- 目上の人に使える便利な「言い換え表現」と、自分が言われた時の「正しい返し方」
言葉の意味を正しく知ることは、相手への思いやりを形にする第一歩です。この記事を読み終える頃には、どんな相手にも自信を持って、あなたの温かい気持ちを添えた贈り物が届けられるようになりますよ。ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
「ご笑納ください」の正しい意味と読み方
まずは、基本となる読み方と意味から確認していきましょう。漢字の成り立ちを知ると、この言葉がもっと好きになるはずです。
読み方は「ごしょうのう」
「ご笑納ください」は、「ご・しょう・のう・ください」と読みます。 「笑」は「笑う」、「納」は「納める(おさめる=受け取って自分のものにする)」という意味ですね。
意味は「つまらないものですが、笑って受け取ってください」
「ご笑納ください」を少しカジュアルな言葉に翻訳すると、「そんなに大層なものじゃないけれど、笑顔で受け取ってもらえたら嬉しいな」という意味になります。 「大したものではありませんが」と自分をへりくだりつつ、相手の笑顔を願う、とても優しくて奥ゆかしい言葉なのです。
💡 コトバノモリ編集者のワンポイント 昔の日本人は、自分の贈り物を「素晴らしいものでしょう!」と自慢することを恥ずかしいことだと考えていました。そのため、「本当はもっと良いものを贈りたかったのですが、私の力不足でこんなものしか用意できず、笑われてしまうかもしれません。でも、どうか受け取ってください」という謙虚な気持ちを「笑」という一文字に込めたのです。 日本人ならではの、相手を立てる温かい気遣いが詰まった美しい言葉ですね。
【重要】「ご笑納ください」を使っていい相手・ダメな相手
意味を聞くと、「すごく丁寧だし、誰にでも使ってよさそう!」と思うかもしれません。しかし、ここが最大の落とし穴です。 「ご笑納ください」は、目上の人には使ってはいけません。
相手との関係性によって、使えるかどうかがはっきりと分かれます。間違えないように、一緒に確認していきましょう。
| 相手との関係 | 使える? | 理由・ポイント |
|---|---|---|
| 友人・同僚・後輩 | 〇 | 対等、または目下の相手には問題なく使えます。 |
| 気心の知れた親戚 | 〇 | 普段から親しくしている親戚や、兄弟姉妹にもOKです。 |
| 上司・恩師・取引先 | ×(NG) | 「笑って受け取って」と相手に要求する形になるため失礼にあたります。 |
| 初対面の人 | △(避ける) | まだ関係ができていないため、より丁寧な言葉を選ぶのが無難です。 |
親しい相手(友人・同僚・気心の知れた人)にはOK
「ご笑納ください」は、基本的に自分と立場が同じ人(同僚や友人)、または目下の人に対して使う言葉です。 また、親戚やご近所さんなど、日頃から親しくお付き合いをしていて、心が通じ合っている相手に対して使うのも問題ありません。
「ちょっとしたものだけど、よかったら笑って受け取ってね」という軽いニュアンスで、ちょっとしたプレゼントやお土産を渡すときにぴったりです。
目上の人・上司・取引先にはNG(失礼になる理由)
絶対に覚えておきたいのが、目上の人(会社の上司、先生、取引先のお客様など)には使ってはいけないということです。
理由は2つあります。 一つ目は、「笑って受け取ってね」というニュアンスが、目上の人に対して少し馴れ馴れしすぎる(フランクすぎる)から。 二つ目は、「〜してください」という言葉が、相手に行動を強制するような印象を与えてしまうからです。「私が用意したんだから、笑って受け取りなさいよ」という風に受け取られかねません。
目上の人に対しては、相手を敬う気持ちを最大限に表す必要があるため、後ほど紹介する「お納めください」などの別の言葉に言い換えるのが正解です。
初対面の人にも避けるのが無難
相手の年齢や立場が上か下かわからない初対面の人に対しても、「ご笑納ください」は使わないほうが安全です。 まだ距離感がつかめていない状態で、へりくだりすぎたり、逆にフランクになりすぎたりすると、相手を戸惑わせてしまうかもしれないからです。初対面の場合は、誰にでも使える無難で丁寧な言葉を選びましょう。
要注意!「ご笑納ください」が使えない3つのNGシーン
相手との関係性だけでなく、「渡す場面」や「渡す物」によっても、「ご笑納ください」が使えないケースがあります。よくある3つの失敗シーンを見てみましょう。
NGシーン1:謝罪やお詫びの品を渡すとき
仕事でミスをしてしまった時や、約束を破って迷惑をかけてしまった時。お詫びの気持ちとしてお菓子などを持参することがありますよね。
この時に「ご笑納ください」と言うのは絶対にNGです。
相手は怒っていたり、迷惑をかけられて困っていたりする状況です。それなのに「笑って受け取ってください」と言われたら、「こっちは笑い事じゃないのに、ふざけているのか!」と火に油を注いでしまいます。 お詫びのシーンでは、「心ばかりのお詫びのしるしです」「どうぞお納めください」など、真摯な言葉を選びましょう。
NGシーン2:お金や商品券を渡すとき
ご祝儀や寸志などとして「現金」を包んだり、「商品券(ギフトカード)」を贈ったりする場合にも、「ご笑納ください」はふさわしくありません。
現金や商品券は、金額がはっきりとわかってしまうものです。金額がわかっているものに対して「つまらないものですが(大したものではありませんが)」と謙遜するのは、かえって嫌味に聞こえてしまったり、不自然な印象を与えたりします。 この場合は、「ささやかですが、お祝いのしるしです」などと添えるのがスマートです。
NGシーン3:品物がなく「手紙や書類だけ」のとき
「ご笑納ください」の「納」は、品物を受け取って自分のものにする、という意味でしたね。 そのため、品物を伴わない「手紙」や「書類」、「写真」や「データ」だけを送る場合には使えません。
文章や書類を見てほしい時は、次のように別の言葉を使います。
- ご笑覧(しょうらん)ください:「つたない文章ですが、笑って見てください」という意味。(※これも目下〜同等の人に使います)
- ご査収(さしゅう)ください:ビジネスで書類などを「よく確認して受け取ってください」という意味。
💡 コトバノモリ編集者のよくある失敗談 私も新人編集者の頃、完成した雑誌の見本誌を、取材でお世話になった目上の先生にお送りする際、手紙に「ご笑納ください」と書いてしまい、先輩からこってり絞られたことがあります。「先生の大切な原稿が載っている本を『つまらないもの』と謙遜するのは失礼だし、目上の方には使わないんだよ」と教えられ、言葉の奥深さを痛感しました。皆さんも気をつけてくださいね!
シーン別!「ご笑納ください」の正しい使い方・例文集
ここからは、実際に「ご笑納ください」を使っても良い相手に対して、どのように言葉を添えれば自然か、具体的な例文を見ていきましょう。
お中元・お歳暮を贈るとき
親戚や親しい知人に、季節のご挨拶として品物を贈る際の添え状やメールに添える例です。
- 例文: 「日頃の感謝を込めまして、心ばかりの品をお送りいたしました。よろしければご笑納ください。体調を崩しやすい時期ですので、どうぞご自愛ください。」
お礼や内祝い(お祝い返し)の品を贈るとき
何かをいただいたお返しや、お世話になったことへのお礼を伝える際に使います。
- 例文: 「先日は素敵な贈り物をいただき、本当にありがとうございました。ささやかですが、地元で評判のお菓子をお届けします。お口に合えば幸いです。ぜひご笑納ください。」
ちょっとした差し入れや手土産を渡すとき
同僚や友人の集まりなどに、気軽な手土産を持っていく際の一言です。
- 例文: 「皆さんに喜んでいただけそうなスイーツを見つけたので買ってきました。もしよろしければ、休憩時間にでもご笑納ください!」
そのまま使える!メールのテンプレート
親しい同僚や、気心の知れた取引先の担当者(※あくまで対等に近い関係の場合)へ送るメールの例です。
件名:お土産(〇〇)送付のお知らせ
〇〇さん
お疲れ様です、コトバノモリの佐藤です。
先日、出張で山形へ行ってまいりました。
駅で見つけたお菓子がとても美味しかったので、
少しですが本日オフィス宛てに発送いたしました。
仕事の合間にでも、皆様でご笑納いただければ幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。
目上の人にはどう言う?「ご笑納ください」の言い換え・類語
上司やお客様など、目上の人には「ご笑納」は使えませんでしたね。では、何と言えば失礼にならずに気持ちが伝わるのでしょうか。
ビジネスで万能な「お納めください」「お受け取りください」
最も間違いがなく、どこでも使えるのがこの2つです。
- お納め(おさめ)ください:「受け取って、手元に置いてください」という丁寧な表現です。
- お受け取りください:ストレートでわかりやすく、誠実な印象を与えます。
食べ物を贈るなら「ご賞味(ごしょうみ)ください」
相手が食べたり飲んだりするもの(お菓子、お酒、フルーツなど)であれば、「美味しく食べてください」という意味の「ご賞味ください」がぴったりです。
ただし、「ご賞味ください」も「味わって食べなさい」という強制のニュアンスを感じる人もいるため、目上の人にはさらに丁寧な「ご賞味いただければ幸いです」とするのがベストです。
謙遜のクッション言葉を組み合わせる
言葉の前に「クッション言葉」を置くことで、より温かみのある、日本らしい丁寧な表現になります。
- 心ばかりですが、お納めください。
- ささやかではございますが、ご笑味いただければ幸いです。
- お口に合うかわかりませんが、ぜひお受け取りください。
💡 コトバノモリ編集者のワンポイント 最近では「つまらないものですが」という言葉は、「つまらないものを渡すな」と感じる人もいるため、あえて避ける傾向にあります。代わりに「私の大好きなものなのですが」「評判のお菓子ですので」と、ポジティブな理由を添えるのが、現代の「明るく温かい」マナーのコツですよ!
自分が言われたら?「ご笑納ください」への正しい返事の仕方
もし相手から「ご笑納ください」と品物を渡されたら、何と答えるのが正解でしょうか。ここでも少し注意が必要です。
絶対NG!「ご笑納いたします」は間違い
相手が「笑って受け取ってください」と言ったからといって、「はい、ご笑納いたします」と答えるのは間違いです。 「笑納」は、贈る側が自分を低くして使う言葉(謙譲語)なので、受け取る側が使うと変な敬語になってしまいます。
正しい受け取り方とお礼の伝え方
相手の謙虚な気持ちを大切にしつつ、喜びを伝えましょう。
- 会話での返し方: 「そんなに謙遜なさらないでください。とても嬉しいです、ありがたく頂戴いたします。」 「ご丁寧にありがとうございます。家族と一緒に楽しくいただきますね。」
- メールでの返信例: 「お心のこもった品をいただき、誠にありがとうございます。一同大変喜んでおります。さっそく、皆で美味しく頂戴いたしました。」
1分で解決!「ご笑納ください」のよくある質問(FAQ)
Q1. 請求書やビジネス文書に「ご笑納ください」は使える?
A1. 使えません。 「ご笑納」はあくまでプレゼントや贈り物のための言葉です。お金のやり取りが発生する書類には「ご査収(ごさしゅう)ください」を使いましょう。
Q2. のし紙の表書きに「ご笑納」と書いてもいい?
A2. 一般的には書きません。 のし紙の上部(表書き)には、「御礼」「内祝」「御挨拶」など、贈る目的を書くのがルールです。「ご笑納」はあくまで渡す時の「言葉」として使いましょう。
Q3. 英語で「ご笑納ください」というニュアンスを伝えるには?
A3. “I hope you like it.”(気に入ってもらえると嬉しいです)が近いです。 英語には「つまらないものですが笑って受け取ってください」という謙遜の文化があまりないため、シンプルに「喜んでほしい」という気持ちを伝えるのが一般的です。
まとめ:言葉に「笑顔」を添えて
「ご笑納ください」という言葉には、「あなたに笑顔になってほしい」という贈り主の優しい願いが込められています。
たしかに目上の人には使えないというルールはありますが、その背景にある「謙虚な姿勢」は、どの相手に対しても忘れたくない大切なものです。
- 基本は「同等・目下の人」に使う
- 目上の人には「お納めください」と言い換える
- 謝罪や現金、書類のときには使わない
この3つのポイントさえ押さえておけば、もう贈り物で迷うことはありません。
言葉は、相手を大切に思う「心」を運ぶ乗り物です。正しいルールを知った上で、あなたらしい温かい言葉を選んでみてください。きっと、あなたの気持ちがまっすぐに相手に届き、素敵な笑顔が返ってくるはずですよ!

