「今年もそろそろ納会(のうかい)の時期だね」
年末が近づくと、職場やニュースでそんな言葉を耳にすることがあります。「なんとなく飲み会のようなもの?」と思っている方も多いかもしれませんが、実は「忘年会」とは少し違った意味や歴史があるのをご存知でしょうか。
言葉の意味を正しく理解しておくと、参加するときの気持ちや振る舞いも自然と変わってくるものです。
この記事では、以下の3つのポイントを中心に、納会についてやさしく解説します。
- 納会の本来の意味と、意外と知らない由来
- 「忘年会」や「打ち上げ」との明確な違い(比較表つき)
- 参加者の服装マナーと、幹事・司会向けの挨拶例文
一年の締めくくりを気持ちよく過ごすために、ぜひ参考にしてくださいね。
「納会」とは?意味と由来をわかりやすく解説
まずは、「納会」という言葉そのものの意味と、どこから始まったのかという由来について見ていきましょう。
納会の基本的な意味:仕事を「納める」区切り
納会とは、その字の通り「会や業務を納める(おさめる)ために行われる集まり」のことです。
一般的には、企業や団体が「大きな仕事の区切り」や「その期間の最後の締めくくり」として行う行事を指します。もっとも多いのは年末の「仕事納め」の日に行われるものですが、会社によっては毎月の月末や、決算期(3月や9月)の終わりに行うこともあります。
単に「お酒を飲んで楽しむ」ことよりも、「今期の業務が無事に終わったことを互いに労う(ねぎらう)」という意味合いが強いのが特徴です。
納会の由来と歴史
納会の明確な発祥年は定かではありませんが、そのルーツは日本の古い「農耕儀礼」や「商慣習」にあると考えられています。
- 農耕儀礼としてのルーツかつて日本人は、秋の収穫が終わると神様に感謝を捧げる「新嘗祭(にいなめさい)」などの行事を行ってきました。一年の労働の成果を納め、共に食事をする「直会(なおらい)」の精神が、形を変えて現代の納会につながっていると言われています。
- 商慣習としてのルーツ江戸時代の商家などでは、年末に帳簿を締めくくり、使用人たちを労う習慣がありました。これが近代的な企業組織における「仕事納め」の行事として定着していきました。
ニュースで聞く「大納会」との関係は?
年末のニュースでよく耳にする「大納会(だいのうかい)」は、証券取引所で行われるその年最後の取引の締めくくり行事のことです(毎年12月30日に行われます)。
これに対し、年明け最初の取引は「大発会(だいはっかい)」と呼ばれます。一般企業の納会とは少し違いますが、「一年を締めくくる大切な儀式」という点では同じ心を持った行事と言えるでしょう。
コトクマ「納める」という言葉には、「あるべき場所に落ち着かせる」「終わりにする」という静かな達成感があります。ただ騒ぐだけでなく、「今年もやりきった」と節目を感じる時間になると素敵ですね。
「納会」と「忘年会」「打ち上げ」の違いは?
「結局、忘年会と同じじゃないの?」と迷ってしまう方のために、それぞれの違いをわかりやすく整理しました。最大の違いは、その「目的」と「開催場所」*にあります。
【一目でわかる】納会・忘年会・打ち上げの違い
それぞれの特徴を表にまとめました。
| 特徴 | 納会(のうかい) | 忘年会(ぼうねんかい) | 打ち上げ |
| 主な目的 | 業務の締めくくり・慰労 | 一年の苦労を忘れる・親睦 | プロジェクト完了の祝い |
| 開催時期 | 仕事納めの日(年末)、期末 | 12月中(時期は問わない) | 仕事が終わった直後 |
| 場所 | 社内の会議室、食堂など | 居酒屋、レストラン、ホテル | 居酒屋など |
| 時間帯 | 勤務時間内〜夕方 | 勤務時間外(夜) | 夜が多い |
| 雰囲気 | やや儀式的・オフィシャル | 無礼講・プライベート | 開放的・盛り上がり |
最大の違いは「オフィシャル感」
納会は、あくまで「業務の延長」として扱われるケースが多いです。そのため、社内の会議室を使い、お寿司やオードブル、ビールなどを用意して立食形式で行われることがよくあります。
一方、忘年会は「年忘れ」という言葉通り、一年の苦労を忘れて楽しむことが目的です。そのため、社外のお店を予約し、無礼講でプライベートな話も含めて盛り上がることが多いのです。
時期の違い:納会は「最終営業日」が基本
忘年会は12月に入ればいつでも開催されますが、納会は基本的に「その年の最終営業日(仕事納めの日)」に行われます。
大掃除をして、最後の朝礼や終礼を行い、その流れで「一年間お疲れ様でした」と乾杯するスタイルが伝統的です。



最近では、社員の負担を減らすために「納会と忘年会を兼ねる」会社も増えています。その場合は「一次会は社内で納会(式典)、二次会は外で忘年会(飲み会)」という流れになることもありますよ。
参加者が知っておきたい納会のマナー
納会は社内行事としての側面が強いため、完全にリラックスして良いわけではありません。最低限押さえておきたいマナーを紹介します。
服装はスーツ?私服?
基本的には、「その日の勤務時の服装」で問題ありません。
- 社内開催の場合:いつものオフィスカジュアルやスーツでOKです。わざわざ着替える必要はありません。
- ホテルや会場を借りる場合:案内状に「平服で」とあればスーツやきれいめの服装が無難です。ジーンズやサンダルなど、ラフすぎる格好は避けましょう。
もし、大掃除のあとに納会がある場合は、掃除のときだけ動きやすい服に着替え、納会の前には身なりを整えるのがスマートです。
途中退室や中座はしてもいい?
納会は勤務時間内(または直後)に行われることが多いため、家庭の事情や帰省の予定で早めに帰りたいこともあるでしょう。
結論から言うと、途中退室は問題ありません。ただし、以下の点に気をつけましょう。
- 乾杯までは参加する:冒頭の社長や上司の挨拶、乾杯まではその場にいるのがマナーです。
- 上司に挨拶をする:こっそり帰るのではなく、直属の上司に「帰省の予定がありますので、お先に失礼します。一年間ありがとうございました」と一言挨拶してから退室しましょう。
話題の選び方:仕事の話はOK?
忘年会では仕事の話は野暮とされることもありますが、納会は「業務の締めくくり」なので、仕事の話をしてもOKです。ただし、愚痴や不満はNG。
- 「あのプロジェクト、無事に終わってよかったですね」
- 「来年は〇〇に挑戦したいです」
といった、前向きな振り返りや未来の話を選ぶと、相手にも好印象を与えられます。



社内で行う場合、ついつい飲みすぎてしまう人がいますが、職場であることを忘れずに。お酒が苦手な人は、無理せずソフトドリンクを片手に会話を楽しみましょう。
【幹事・司会向け】納会の流れと挨拶・スピーチ例文
もしあなたが納会の幹事や司会を任されたら、どのような準備をすればよいでしょうか。ここでは一般的な流れと、そのまま使える挨拶の例文を紹介します。
一般的な納会のプログラム(流れ)
納会は長々とやらず、1〜2時間程度でコンパクトにまとめるのが主流です。
- 開会の辞(司会)
- 代表挨拶(社長や部長など上位の役職者)
- 乾杯(役員や来賓など)
- 歓談・食事
- 締めの挨拶(役員や幹事など)
- 手締め(一本締めなど)
- 閉会の辞・解散
【そのまま使える】開会・乾杯の挨拶例文
乾杯の挨拶は、長く話すぎないのがポイントです。1分程度でまとめましょう。
例文(司会・幹事の場合):
「皆様、本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。ただいまより、〇〇株式会社 令和〇年度の納会を始めさせていただきます。この一年、皆様の多大なるご尽力により、無事今日を迎えることができました。」
例文(乾杯の音頭):
「皆さん、一年間本当にお疲れ様でした。今年は〇〇という大きな目標もあり、大変な時期もありましたが、皆さんのチームワークのおかげで乗り越えることができました。来年も良い年になるよう祈念し、乾杯したいと思います。乾杯!」
【そのまま使える】締めの挨拶と手締め
最後はビシッと締めて、解散を促します。
例文(締めの挨拶):
「宴もたけなわではございますが、お時間となりましたので、一旦締めさせていただきます。皆様、本年は本当にお疲れ様でした。年末年始はゆっくりと体を休め、また来年、元気な姿でお会いしましょう。」
手締め(一本締め)の掛け声:
「それでは、当社のさらなる発展と、皆様のご健勝を祈念いたしまして、一本締めで執り行いたいと思います。お手を拝借。……よーお、(パン!)ありがとうございました!」



手締めには「一丁締め(パン!一回)」、「一本締め(パパパン、パパパン、パパパン、パン)」、「三本締め(一本締めを3回)」があります。地域や会社によってルールが違うので、事前に先輩に確認しておくと安心ですよ。
納会に関するよくある質問(FAQ)
最後に、納会についてよく寄せられる疑問にQ&A形式でお答えします。
Q. 納会はランチタイムに行ってもいいですか?
A. はい、最近とても増えています。
「ランチ納会」として、お昼にお弁当やピザを頼んで行う企業も多いです。お酒を出さない(ノンアルコール)ケースもあり、子育て中の社員や夜に予定がある社員も参加しやすいというメリットがあります。
Q. 納会への差し入れは何がおすすめですか?
A. 手軽につまめる個包装のお菓子やお酒が人気です。
社内で行う場合、切り分けが必要なケーキなどは手間がかかるため避けましょう。個包装された焼き菓子や、少し高級なビール、おつまみセットなどは喜ばれます。常温で保存できるものがベストです。
Q. 「納会」の反対語(仕事始めの会)は何ですか?
A. 「仕事始め式」や「新年会」にあたります。
証券取引所の「大納会」に対する言葉は「大発会(だいはっかい)」ですが、一般企業では、年始の最初の営業日に行う集まりを「仕事始め式」「年賀式」や、シンプルに「新年会」と呼びます。
Q. 案内メールには何を書けばいいですか?
A. 日時・場所・会費の有無・出欠確認を明記しましょう。
件名は「【ご案内】令和〇年度 納会のお知らせ」など分かりやすく。本文には「一年間の労をねぎらい、親睦を深める場として納会を開催します」といった目的を添えると丁寧です。
まとめ:納会は「終わりよければ全てよし」を体現する場
納会は、単なる飲み会ではなく、「一年間の仕事を納め、互いに感謝を伝え合う大切な節目」です。
- 意味:業務の区切りをつけるための行事
- 違い:忘年会よりもオフィシャルで、社内・短時間で行われることが多い
- 心構え:マナーを守りつつ、前向きな言葉で一年を締めくくる
「終わりよければ全てよし」という言葉があるように、納会を気持ちよく終えることができれば、新しい年もきっと良いスタートが切れるはずです。
今年一年頑張った自分と仲間を、温かい気持ちで労ってあげてくださいね。

