「部長に資料を確認してほしいけど、今は会議中かな…」 「取引先にメールを送りたいけど、急かしていると思われたくないな」
仕事をしていると、こんなふうに「相手に動いてほしいけれど、邪魔はしたくない」と悩むシーン、たくさんありますよね。
そんな時に大活躍するのが、今回ご紹介する魔法のクッション言葉「お手すきの際に」です。
この言葉をサラッと使えるようになると、相手への配慮を示しながら、こちらの要望もしっかり伝えることができます。「仕事ができる人」ほど、この言葉の使い方がとても上手なんですよ。
この記事では、言葉のプロである「コトバノモリ」編集部が、以下のポイントを分かりやすく解説します。
- 「お手すきの際に」の正しい意味と、使っていい相手
- そのまま使える!メール&チャットの鉄板例文集
- 「いつまで経っても返信がこない…」を防ぐテクニック
明日からのメールや会話ですぐに使える内容ばかりです。ぜひ最後まで読んで、コミュニケーションの達人になってくださいね!
「お手すきの際に」の意味とは?誰に使っていいの?
まずは、この言葉の正体について正しく理解しましょう。「なんとなく丁寧そうだから」と雰囲気で使っていると、思わぬ誤解を招くこともあるので注意が必要です。
「お手すき=手が空いている状態」の丁寧語
「お手すき」とは、漢字で書くと「お手透き」。文字通り、「手が空いている状態」のことを指します。これに丁寧語の「お」をつけて、相手の状態を敬った言葉です。
ただ、ここで一つ重要なポイントがあります。
ビジネスシーンにおける「手が空いている」とは、「暇で何もすることがない状態」ではありません。そんな時間は、忙しいビジネスパーソンにはほとんどありませんよね。
ここで言う「お手すき」とは、「本来の業務の合間」や「一息ついたタイミング」というニュアンスが強いです。



イメージとしては、忙しい波(仕事)と波の間にある「一瞬の凪(なぎ)」のような状態です。「お忙しいのは重々承知していますが、その合間のふとした瞬間に」という、相手の忙しさを尊重する気持ちが込められているんですね。
【○】上司・社外の人(目上の人)に使ってOK!
「お手すきの際に」は、上司や先輩、取引先など、目上の人に対して使って問題ありません。
むしろ、積極的に使いたい言葉です。なぜなら、この言葉には以下のようなメッセージが含まれているからです。
- 「あなたの時間を奪いたくありません」
- 「こちらの都合を押し付けません」
- 「急ぎではないので、あなたのペースで進めてください」
相手の事情を優先する「クッション言葉」として機能するため、いきなり「確認してください!」と言うよりも、ずっと柔らかく、好印象を与えることができます。
【×】自分自身・緊急時には使わない
一方で、使ってはいけないNGシーンが2つあります。ここだけは絶対に押さえておきましょう。
1. 自分自身の行動には使わない
「お手すき」は相手の状態を敬う言葉(尊敬語のニュアンスを含む)なので、自分には使いません。
- × NG例: 「今ちょっとお手すきになったので、電話しました。」
- ○ OK例: 「今少し手が空きましたので、電話しました。」
自分のことを言うときは、シンプルに「手が空く」「時間ができる」と言いましょう。
2. 緊急の案件には使わない
これが一番やってしまいがちな失敗です!
明日が締め切りの重要な契約書なのに、「お手すきの際にご確認ください」と送ってしまったらどうなるでしょうか?
相手は「あ、急ぎじゃないんだな。じゃあ来週見よう」と判断してしまいます。その結果、締め切りに間に合わず大トラブルに……なんてことになりかねません。
急ぎの時は、「至急」「〇月〇日の×時までに」とはっきり伝えるのが、ビジネスにおける本当の優しさです。
【コピペOK】状況別「お手すきの際に」鉄板例文集
意味がわかったところで、実際のビジネスシーンですぐに使える例文をご紹介します。メールやチャット(SlackやChatworkなど)で、そのままコピペして使ってみてくださいね。
上司に確認・承認をお願いするとき(メール・チャット)
上司への依頼は、「報告」なのか「相談」なのかをはっきりさせつつ、相手の時間を尊重するのがコツです。
基本のパターン
もっとも汎用性が高い、基本の形です。
件名:【確認依頼】A社向け提案資料の作成について
山田課長 お疲れ様です。〇〇です。
先日のミーティングで指示いただいた、A社向けの提案資料を作成いたしました。 添付ファイルにてお送りします。
お手すきの際に、内容をご確認いただけますでしょうか。 修正点などありましたらご指示ください。 よろしくお願いいたします。
チャットで送る短いパターン
SlackやTeamsなどで、サクッと送りたいときはこれくらいシンプルでOKです。
山田課長、お疲れ様です。 例の見積書の下書きをフォルダに入れました。 急ぎではありませんので、お手すきの際にご確認をお願いします!
取引先に返信や資料送付を依頼するとき
社外の方、特にお客様や取引先に対しては、さらに丁寧な配慮が必要です。「こちらの都合で申し訳ない」という気持ちを添えると、関係がスムーズになります。
件名:【ご送付】お打ち合わせ資料の修正版につきまして
株式会社〇〇 佐藤様
いつもお世話になっております。コトバノモリの〇〇です。
昨日のお打ち合わせでご指摘いただいた箇所を修正いたしました。
急ぎませんので、お手すきの際にご確認いただき、お返事をいただけますと幸いです。 ご多忙の折、恐縮ですがよろしくお願いいたします。
口頭・電話で声をかけるとき
「今、話しかけても大丈夫かな?」と迷ったときこそ、「お手すき」の出番です。Yes/Noで答えられる質問形式にするのがポイントです。
- 上司に話しかけるとき: 「〇〇課長、今少しお手すきでしょうか? 5分ほど相談させていただきたいのですが」
- 電話をかけたとき: 「お世話になっております。〇〇です。今、お手すきでしょうか?(=お話ししても大丈夫でしょうか?)」
ここが重要!「返信が来ない」を防ぐ3つのテクニック
「お手すきの際に」は便利な言葉ですが、実は大きな落とし穴があります。
それは、「相手が『やらなくていい仕事』だと勘違いして、後回しにされてしまうこと」です。
「お手すきでお願い」と言ったメールが、1週間経っても返ってこない…。そんな悲劇を防ぐための、プロのテクニックを伝授します。
1. 実は危険?「お手すき=暇なとき」は永遠に来ない
最初にお伝えした通り、ビジネスパーソンに「完全な暇」は訪れません。 相手が多忙な人の場合、「お手すきの際に」という言葉を「重要度が低いから、時間が余ったとき(=いつになるか分からない未来)でいいや」と脳内変換してしまうことがあります。
そのまま忘れ去られてしまうのを防ぐには、次のテクニックを使いましょう。
2. 期限をやんわり伝える「魔法のセットフレーズ」
相手を急かしたくないけれど、いつかはやってほしい。そんな時は、「お手すき」+「ふんわり期限」の合わせ技が最強です。
- × ただ待つだけ: 「お手すきの際にご確認ください」 (心の声:いつ見てくれるんだろう…)
- ◎ 期限を添える: 「急ぎではありませんが、来週の定例会議までに目を通していただけると助かります」 「もし可能でしたら、今週中にお返事をいただけますと幸いです」
このように、「絶対に明日まで!」という強い強制力ではなく、「この辺りまでにお願いできると嬉しい」という希望の期限を伝えることで、相手もスケジュールを組みやすくなります。
3. 件名や冒頭で重要度をコントロールする
メールの場合、件名に工夫をするのも効果的です。
- 【ご相談】 Aプロジェクトの件(お手すきの際にご確認ください)
- 【共有】 議事録の送付(返信不要です)
このように、件名で「アクションが必要なのか、見るだけでいいのか」が分かるようにしておくと、相手の負担を減らしつつ、見落としを防ぐことができます。
相手との距離感で使い分け!便利な言い換えリスト
「お手すきの際に」ばかり使っていると、少しワンパターンに感じることもありますよね。相手との距離感に合わせて、言葉を使い分けてみましょう。
より丁寧に言いたいとき(社外・役員クラス)
目上の相手に、さらに敬意を示したい場合に最適です。
- 「ご都合のよろしい時に」 (例:ご都合のよろしい時に、ご返送をお願いいたします。)
- 「お時間のある際に」 (例:お時間のある際に、ご一読いただけますでしょうか。)
- 「ご多忙の折、恐縮ですが」 (例:ご多忙の折、恐縮ですが、ご確認のほどお願い申し上げます。)
少しカジュアルに言いたいとき(同僚・親しい先輩)
普段からよく話す先輩や同僚なら、少し砕けた表現の方が自然です。
- 「手が空いたときでいいので」 (例:手が空いたときでいいので、これ見ておいて!)
- 「時間あるときにお願い」 (例:急ぎじゃないから、時間あるときにお願いします。)
【逆の立場】上司から「お手すきで」と言われたらどうする?
今度は逆に、あなたが上司から「これ、お手すきの時でいいからやっといて」と頼まれた場合の対処法です。
ここでの対応一つで、あなたの評価が大きく変わります!
真に受けて後回しにするのはNG!
上司が言う「お手すきで」は、「今すぐ最優先でやらなくていいけど、忘れないでね(=なるべく早くやってね)」という意味であることがほとんどです。
これを真に受けて「あ、暇なときでいいんだ」と1週間放置すると、「あれ、まだできてないの?」とお叱りを受けることに…。
「お手すきで」という言葉は、上司の優しさ(配慮)です。その配慮に応えるためにも、可能な限り早め(当日中〜翌日)に対応するのが「デキる人」のマナーです。
評価が上がる「神対応」返信
頼まれたその場で、「いつやるか」を宣言してしまうのがベストです。
- 上司: 「これ、お手すきの時でいいから確認しといて」
- あなた: 「ありがとうございます! では、午後の会議が終わったら確認してご連絡しますね」
- あなた: 「承知しました。明日の午前中までには提出できるようにします」
こう返すと、上司は「お、しっかり管理できているな」と安心し、あなたの信頼度がグッと上がります。
よくある疑問(FAQ)
最後に、「お手すきの際に」に関するよくある疑問を解消しておきましょう。
Q. 「お手すきの際で構いません」は失礼ですか?
A. 目上の人には避けたほうが無難です。
「〜で構いません」という言葉には、「私が許可します」という上から目線のニュアンス(許可のニュアンス)が含まれることがあります。 上司や取引先には、「お手すきの際にお願いいたします」や「〜いただけますと幸いです」と言い換えるのが正解です。
Q. 英語で「お手すきの際に」はどう言う?
A. “at your convenience” が定番です。
- Please check this document at your convenience. (お手すきの際に、この書類を確認してください)
- Please reply when you have time. (時間があるときに返信してください ※ややカジュアル)
Q. 就活メールで使ってもいいですか?
A. はい、使えます。
OB・OG訪問の依頼や、面接の日程調整などで使えます。「お忙しい中とは思いますが」という配慮が伝わり、好印象です。ただし、お礼メールなど、感謝を伝えるだけの場面では無理に使う必要はありません。
まとめ
「お手すきの際に」は、相手の忙しさを気遣いながら、こちらの要望を伝えることができる大人のコミュニケーションツールです。
- 意味: 「業務の合間」を指す丁寧な言葉。
- 相手: 上司・取引先に使ってOK。自分には使わない。
- コツ: 返信が欲しいときは、「ふんわり期限」をセットにする。
- 言われたら: 放置せず、「いつやるか」を即答する。
この言葉を使いこなせるようになると、仕事の依頼がスムーズになるだけでなく、「あの人は気配りができるな」と周りからの評価も自然と高まっていきます。
ぜひ明日からのメールや会話に、「お手すきの際に」という思いやりを添えてみてくださいね。

