最近、お子さんが「トゥントゥントゥン……サフール!」と不思議な呪文のような言葉を口ずさんでいるのを耳にしませんでしたか? あるいは、YouTubeやTikTokで、野球のバットを持った奇妙な木のキャラクターが踊っている動画を見かけて、頭から離れなくなってしまった方もいるかもしれません。
一見すると意味不明で、少し不気味だけれど、なぜか愛らしい。そんな不思議な魅力を持つ「トゥントゥントゥンサフール(Tung Tung Tung Sahur)」が今、世界中で、そして日本の子供たちの間でも爆発的なブームを巻き起こしています。
「なぜ木が喋るの?」「サフールってどういう意味?」「なんでこれが流行っているの?」
この記事では、言葉と文化の専門メディア「コトバノモリ」の編集部が、単なる流行の解説にとどまらず、その背後にある異文化の伝統、言葉の響きの面白さ、そして最新AI技術との関わりまで、あらゆる角度から徹底的に掘り下げて解説します。
読み終わる頃には、あなたもこの不思議な言葉の響きに隠された奥深い世界を、誰かに教えたくなっているはずです。それでは、トゥントゥントゥンサフールの世界へ一緒に出かけましょう。
この記事でわかること
- 「トゥントゥントゥンサフール」の正確な意味と、元ネタとなったインドネシアの文化
- なぜ子供たちが夢中になるのか? その心理的背景と「イタリアンブレインロット」という新ジャンル
- Robloxなどのゲームでの攻略情報から、AIを使って自分で作る方法まで
トゥントゥントゥンサフールの正体と言葉の意味
まずは基本から押さえていきましょう。この耳に残るフレーズとキャラクターは一体何者なのでしょうか。その名前には、実はとても真面目で文化的な意味が込められています。
トゥントゥントゥンサフールとは何か?
「トゥントゥントゥンサフール」とは、2025年の春頃からTikTokなどのショート動画プラットフォームを中心に世界的に流行したインターネット・ミーム(ネット上で拡散されるネタ)の一つです。
その正体は、AI(人工知能)によって生成されたキャラクターと、独特なリズムを持つ音声が組み合わさった動画作品です。ビジュアルとしては、野球のバットを持った木製の円筒形のような姿をしており、顔にはぎょろりとした目と口がついています。一見すると少し怖いホラー要素を含んでいますが、コミカルな動きと陽気な音声によって、親しみやすい「キモカワ」キャラクターとして受け入れられています。
名前の由来:「トゥン」と「サフール」の言語学的分析
この不思議な名前は、適当な呪文ではありません。そのルーツは東南アジアの国、インドネシアにあります。言葉を分解して、その意味を紐解いてみましょう。
| 単語 | 原語表記 | 意味・解説 |
|---|---|---|
| トゥン | Tung | 擬音語(オノマトペ)。 インドネシアの伝統的な竹や木の打楽器「Kentongan(ケントガン)」や「Bedug(ベドゥグ)」を叩く音を表します。日本でいう「ドン」「コン」にあたります。 |
| サフール | Sahur / Suhoor | イスラム教用語。 ラマダン(断食月)の期間中、夜明け前(日の出前)にとる食事のこと。アラビア語由来の言葉です。 |
つまり、「トゥントゥントゥンサフール」というフレーズ全体では、「(太鼓をドンドンドンと鳴らして)さあ、夜明け前の食事の時間ですよ! 起きてください!」という、目覚ましの呼びかけを意味しているのです。
インドネシアなどのイスラム圏では、ラマダンの期間中、日が出ている間は一切の飲食を断ちます。そのため、日が昇る前の早朝(午前3時や4時頃)に起きて、一日を乗り切るための食事(サフール)をとることが非常に重要になります。地域の人々が太鼓を叩きながら家々を回り、寝ている人を起こす習慣があり、このキャラクターはその「起こしに来る人(または精霊)」をモチーフにしているのです。
なぜ「木」のキャラクターなのか?
キャラクターの体が木のような質感をしている理由も、この由来を知ると納得がいきます。彼がモチーフにしているのは、合図に使われる木製のスリットドラム(Kentongan)そのものが擬人化された姿だからです。
また、彼が手に持っている野球バットのような棒は、本来は太鼓を叩くためのバチ(撥)を表していると考えられますが、ミーム化する過程で「起きない人を無理やり起こすための武器」のような、少し物騒でユーモラスな解釈が加えられ、現在のバットの形状に定着しました。
コトクマ「トゥントゥントゥン」という音の連続は、言語学的に見ても非常にリズム感が良く、記憶に残りやすい構造をしています。特に「T」や「K」のような破裂音は、注意を喚起する効果が高く、目覚ましの合図としては理にかなっているのです。
徹底深掘り:インドネシアの文化「サフール」とラマダン
ミームとしての面白さを楽しむ一方で、その元となった文化について正しく理解することは、多様性を尊重する上で非常に大切です。ここでは、背景にあるラマダン文化について詳しく解説します。
イスラム教におけるラマダン(断食月)とは
ラマダンとは、イスラム暦(ヒジュラ暦)の第9月のことを指します。イスラム教徒にとって最も神聖な月とされ、この約1ヶ月間、夜明けから日没までの間、一切の飲食を断つ「断食(サウム)」を行います。
断食は単に食事を抜く苦行ではなく、飢えを体験することで恵まれない人々への共感を育み、自制心を養い、神への信仰を深めるための精神的な修行の期間とされています。
「サフール」が持つ特別な意味
日中は水さえも飲めない過酷な環境下で、健康を維持し、一日を元気に過ごすために不可欠なのが、夜明け前にとる食事「サフール(Sahur/Suhoor)」です。
サフールは、太陽が昇る前、まだ外が暗い時間帯(午前3時〜4時頃)に食べなければなりません。もし寝過ごしてサフールを食べ損ねてしまうと、日中の断食が非常に辛いものになってしまいます。そのため、イスラム圏の人々にとって「サフールの時間に確実に起きること」は、生活リズムを守るための死活問題とも言えるほど重要なミッションなのです。
伝統的な合図「Kentongan」と地域の絆
目覚まし時計やスマートフォンがない時代から、地域社会全体で協力して起きるための仕組みがありました。それが、トゥントゥントゥンサフールの元ネタとなった、太鼓による呼びかけです。
インドネシアでは、竹や木をくり抜いて作った「Kentongan(ケントガン)」や、牛の皮を張った大きな太鼓「Bedug(ベドゥグ)」がモスクや集会所に置かれています。ラマダンの期間中、若者たちがグループを作って町内を練り歩き、これらの楽器を「トゥントゥントゥン」とリズミカルに叩きながら、「サフール! サフール!」と大声で呼びかけて回ります。
この風景は、インドネシアのラマダンの風物詩であり、地域の人々の絆を感じさせる温かい伝統行事です。あの奇妙なキャラクターの「うるさいくらいに呼びかけてくる」行動は、実は「みんなが寝過ごさないように」という、地域の人々の優しさと責任感から生まれた行動を極端にデフォルメしたものだったのです。
日本文化との共通点
- 火の用心:拍子木を叩いて夜回りをする日本の習慣と、音を出して地域を回る点が似ています。
- 除夜の鐘:音によって時間を告げ、精神的な区切りをつける点に通じるものがあります。
流行の背景:「イタリアンブレインロット」という新ジャンル
なぜ、インドネシアのローカルな文化が、遠く離れた日本や世界中でこれほどの大ブームとなったのでしょうか。その背景には、「イタリアンブレインロット」と呼ばれる新しいインターネット文化の存在があります。
ブレインロット(Brainrot)とは?
「Brainrot(ブレインロット)」とは、直訳すると「脳が腐る」という意味のネットスラングです。
これはネガティブな意味だけではなく、以下のようなニュアンスを含んだ言葉として、Z世代やα世代(アルファ世代:2010年代以降生まれ)の間で使われています。
- 意味のなさ:論理的な脈絡がなく、中身がないこと。
- 中毒性:バカバカしいけれど、見ているとなぜかハマってしまい、思考停止して見続けてしまうこと。
- ミームの過剰摂取:次々と新しいネタが消費され、混ざり合っていくインターネットの混沌とした状態。
イタリアンブレインロット(Italian Brainrot)の特徴
「イタリアンブレインロット」は、ブレインロットの一種で、AI技術を用いて作られた特定のスタイルの動画群を指します。2025年初頭からTikTokで爆発的に流行しました。
| 特徴 | 具体的な内容 |
|---|---|
| ビジュアル | AI生成の合成画像。 動物、食べ物、日用品などを無理やり合体させた奇妙なキャラクター(例:サメ+靴、ワニ+飛行機)。 |
| ネーミング | 疑似イタリア語。 語尾に「~ーノ」「~ーラ」「~ーロ」などをつけた、イタリア語っぽく聞こえる名前。 |
| 音声 | AIによる読み上げ(TTS)。 「ElevenLabs」の「Adam」というモデルを使用した、抑揚の効いた男性の声が定番。 |
| ストーリー | シュールで不条理。 突然のバトル、裏切り、結婚など、脈絡のない展開が続く。 |
なぜ「イタリアン」なのに「インドネシア」?
ここで一つの疑問が浮かびます。「トゥントゥントゥンサフールはインドネシア由来なのに、なぜイタリアンブレインロットに分類されるの?」
これは、「文脈の融合」によるものです。
トゥントゥントゥンサフールが登場した時期が、ちょうど「イタリアンブレインロット」が流行していた時期と重なっていました。そして、AI生成による不気味なビジュアルや、AI音声を使うスタイルが共通していたため、ユーザーたちの間で自然と「イタリアンブレインロット・ファミリーの一員」として受け入れられてしまったのです。
結果として、インドネシアの伝統行事が、イタリア風のミーム文化と混ざり合い、世界中で消費されるという、インターネットならではの不思議な現象が起きました。
キャラクター図鑑:ユニークな仲間たち
「イタリアンブレインロット」の世界には、トゥントゥントゥンサフール以外にもたくさんの個性的なキャラクターが存在します。彼らの名前は言葉遊びや韻を踏んでおり、声に出して読みたくなる魅力があります。
ここでは、主要なキャラクターのプロフィールを詳細にまとめました。
1. トゥントゥントゥンサフール (Tung Tung Tung Sahur)
- 別名:The Sahur Man, Tung
- 特徴:木製の円筒形の体に手足が生え、野球バットを持った姿。
- 役割:サフールの時間を告げるリーダー的存在。
- 都市伝説:サフールの呼びかけに3回答えないと、このクリーチャーが家にやってくると言われている。
- 派生形:兄とされる「タタタタサフール」や、類似種の「トトトトトサフール」なども存在する。
2. トララレロ・トラララ (Tralalero Tralala)
- 外見:青いサメの体に、なぜかナイキのスニーカーを履いた3本の足が生えている。
- 起源:イタリアンブレインロットの元祖とも言われる存在。名前の由来は、ドウェイン・ジョンソン(ザ・ロック)が動画で口ずさんだ無意味なフレーズや、イタリアの童謡など諸説ある。
- 性格:陽気だが、どこか狂気を感じさせる歌声が特徴。
3. ボンバルディーロ・クロコディーロ (Bombardino Crocodilo)
- 外見:ワニ(クロコダイル)と爆撃機(ボンバルディエ)が合体した姿。背中に翼やプロペラがついている。
- 名前の妙:「Crocodilo(ワニ)」と「Bombardino(爆撃+イタリア語尾)」で韻を踏んでいる。
- 設定:空を飛びながら何かを落としてくる、攻撃的なキャラクターとして描かれることが多い。
4. バレリーナ・カプチーナ (Ballerina Cappuccina)
- 外見:頭がカプチーノのマグカップで、体がバレリーナの衣装を着た女性キャラクター。
- 関係性:「カプチーノ・アサシーノ(Cappuccino Assassino=暗殺者)」という、対になる物騒なキャラクターと夫婦や敵対関係にあるという設定(Lore)がファンによって作られている。
5. その他のユニークな仲間たち一覧
| キャラクター名 | 外見の特徴 | 名前の由来・備考 |
|---|---|---|
| ボネカ・アンバラブ (Boneca Ambalabu) | カエル+人間+タイヤ | 「Boneca」はポルトガル語で「人形」。不気味な見た目で人気。 |
| チムパンジーニ・バナニーニ (Chimpanzini Bananini) | チンパンジー+バナナ | 語呂合わせの良さが特徴のクラシックな合成。 |
| リリリ・ラリラ (Lirili Larila) | サボテン+ゾウ | 平和主義者という設定があり、争いを避ける。 |
| ボムボムビーニ・グシーニ (Bombombini Gusini) | ガチョウ(Goose)+爆撃機 | ボンバルディーロの兄弟分のような存在。 |



これらのキャラクターには「公式設定」がほとんどありません。ユーザーがコメント欄や二次創作動画で勝手に設定を付け加え、それが「Lore(伝承・設定)」として定着していくのが、現代のミーム文化の面白いところです。
楽曲と歌詞の謎:「トゥントゥントゥンサフールに恋している」
トゥントゥントゥンサフールのブームをさらに加速させたのが、キャッチーな楽曲の存在です。
楽曲の正体とBGM
多くの動画で使用されている代表的なBGMは「The Sound Of Your Fear」と呼ばれるトラックですが、日本では特に、ファンによって作られた「トゥントゥントゥンサフールに恋している」というタイトルの楽曲(または動画シリーズ)が人気を集めています。
これは、不気味なキャラクターたちに対して、あえて「恋している」という乙女チックな歌詞を乗せることで、シュールなギャップを生み出すネタ曲です。
歌詞の分析と空耳
歌詞の一例を紹介します(投稿者によってバリエーションがあります)。
わたし、トゥントゥントゥンサフールに恋をしている
この気持ちにウソをつけないよ
わたし、テテテテサフールにも恋をしている
旦那はカプチーノ・アサシーノなのに……
この歌詞では、投稿者が様々なブレインロットキャラクターたちに次々と「浮気」をするかのように目移りしていく様子が描かれています。「テテテテサフール」や「カプチーノ・アサシーノ」といった名前のリズム感を楽しみながら、キャラクター同士の複雑(で無意味)な関係性を妄想して楽しむ内容になっています。
また、海外の動画の音声を、日本語の面白い言葉として聞き取る「空耳(そらみみ)」も流行の一因です。「〇〇してる」や「〇〇だよね」のように聞こえる箇所を探し、それに合わせて字幕をつける遊びは、かつての「マイヤヒ」現象を彷彿とさせます。言葉の意味を超えて、音の面白さだけでつながるコミュニケーションと言えるでしょう。
ゲーム攻略:Roblox「Steal a Brainrot」完全ガイド
見るだけでなく、実際に操作して遊びたい!という子供たちのために、トゥントゥントゥンサフールが登場するゲームについて解説します。特に世界的なゲームプラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」でのゲームが大人気です。
Roblox「Steal a Brainrot」とは?
Roblox内のゲーム「Steal a Brainrot(スティール・ア・ブレインロット)」は、様々なミームキャラクター(Brainrot)を集めて自分の基地に配置し、お金を稼ぐシミュレーションゲームです。他のプレイヤーの基地からキャラクターを「盗む」ことができるのが最大の特徴です。
このゲームにおいて、トゥントゥントゥンサフールは非常に強力なユニットとして君臨しています。
トゥントゥントゥンサフールのステータス
かつては著作権の問題で一時削除されていましたが、アップデートで復活し、最強クラスのユニットとなっています。
| 項目 | 旧ステータス | 新ステータス (復活後) | 備考 |
|---|---|---|---|
| レアリティ | Rare (レア) | Secret (シークレット) | 非常に希少になりました。 |
| コスト | $3,000 | $500,000,000 ($500M) | 価格が跳ね上がっています。 |
| 収入 | $25 / 秒 | $1,500,000 / 秒 ($1.5M) | 1秒あたり150万ドルを稼ぎ出します。 |
入手方法と攻略テクニック
このキャラクターを手に入れる方法は主に以下の3つです。
1. 正規購入する(難易度:高)
ゲーム内通貨で$500Mを貯めて購入します。インフレが進んでいるゲーム内でもかなりの高額であり、初心者にはハードルが高い方法です。
2. 「Coffin(棺桶)」から入手する(運要素)
「Coffin Tung Tung Tung Sahur」というアイテム(ラッキーブロックの一種)を開けると、中から登場することがあります。これはイベントやAdmin(運営者)による配布などで出現することがあります。
3. 他のプレイヤーから盗む(推奨テクニック)
ゲームの醍醐味である「Steal(盗み)」で入手する方法です。
手順:
- トゥントゥントゥンサフールを配置しているプレイヤーの基地を探す。
- 相手が基地から離れたり、油断している隙を狙う。
- 「Bee Launcher(ハチ発射機)」や「Rage Table」などの妨害アイテムを使って相手を転ばせたり、動きを止めたりする。
- その隙にユニットに近づき、「E」キーを長押しして盗む。
- 盗んだらすぐに自分の基地へ逃げ帰る!
公開サーバー(Public Server)でこのユニットを持っていると、常に他のプレイヤーから狙われます。安全に稼ぎたい場合は、プライベートサーバー(Private Server)を利用するのが鉄則です。
その他のブラウザゲーム
Roblox以外にも、手軽に遊べる無料のブラウザゲームが存在します。
- トゥントゥンゲーム: 追いかけてくるトゥントゥンサフールから逃げながらコインを集めるアクションゲーム。
- お皿にダイブ: キャラクターを飛ばして、回転寿司のようにお皿の上に着地させる物理演算ゲーム。
実践編:AIでオリジナルの「ブレインロット」を作る方法
トゥントゥントゥンサフールの魅力の一つは、「自分でも作れる」ことです。AIツールを使えば、誰でもオリジナルの「ブレインロット」キャラクターを生み出すことができます。ここでは、その具体的な手順を解説します。
1. 「あの声」を作る:音声生成AI
トゥントゥントゥンサフールの特徴的な、少し低音で抑揚の効いたナレーションボイスは、AI音声合成サービスで作られています。
- 使用ツール: ElevenLabs(イレブンラボ)
- モデル名: Adam(アダム)
手順
- ElevenLabsの公式サイトにアクセスし、Text-to-Speech(テキスト読み上げ)を選択。
- Voice(声)のライブラリから「Adam」を選ぶ。
- 読ませたいテキストを入力する(例:”Tung tung tung sahur. Scary anomaly…”)。
- Generateボタンを押して音声をダウンロードする。
- ポイント: 英語やイタリア語で入力すると、あの「本物っぽい」雰囲気が出ます。日本語を入力すると、片言の外国人風になり、それもまた味になります。
2. 「あの見た目」を作る:画像生成AI
次に、キャラクターの画像を生成します。
- 使用ツール: Bing Image Creator (DALL-E 3), Midjourney, Sider.AI など。
プロンプト(指示文)のコツ:
- 異質なものの組み合わせ: 「動物 + 日用品」が基本です。
- 具体的かつカオスに: 「3本足のサメ」「ナイキの靴を履いている」「リアルな質感」など。
- プロンプト例(トゥントゥン風):”A character made of a wooden log, holding a baseball bat, anthropomorphic, funny and creepy face, realistic wood texture, standing in a dark street, 3D render style.”
(木の丸太でできたキャラクター、野球バットを持っている、擬人化、面白くて不気味な顔、リアルな木の質感、暗い通りに立っている、3Dレンダリングスタイル)
3. 「動き」をつける:動画生成AI
静止画を動かして動画にするには、最新の動画生成AIを使います。
- 使用ツール: Viggle AI, Runway Gen-2 など。
- 手順 (Viggle AIの場合):
- Discord経由などでViggleにアクセス。
- /mix コマンドを使用。
- 生成したキャラクターの画像をアップロード。
- 動かしたい動きのテンプレート(ダンス動画など)を選択。
- AIがキャラクターをその動きに合わせてアニメーション化してくれます。
これらを組み合わせて、TikTokやYouTubeショートに投稿することで、あなたもブームの作り手側になることができるのです。
教育・保育の現場での活用と注意点
最後に、このブームを教育的な視点でどう捉え、どう扱うべきかについて、保護者や教育関係者の方向けのアドバイスをまとめます。
リズム遊びとしての教育効果
「トゥントゥントゥン」というリズムに合わせて体を動かすことは、子供の発達においてポジティブな効果が期待できます。
期待できる3つの効果
- リズム感と運動能力の向上: 一定のテンポでジャンプしたり(リズムジャンプ)、手拍子を打ったりすることで、基礎的な身体能力を養います。
- 発語の促進: 「トゥントゥン……サフール!」というコール&レスポンス形式は、言葉を発する楽しさを教えるのに適しています。
- 表現力とストレス発散: 意味のない言葉を大声で叫んだり、変な動きを真似ることは、子供たちにとって良い心の発散(カタルシス)になります。
保育園や家庭内で、準備運動や遊びの一環として取り入れることは、子供たちが楽しみながら体を動かす良い機会になるでしょう。
保護者が知っておくべき配慮
一方で、忘れてはならないのが、この言葉がイスラム教の神聖な行事に由来しているという点です。
- 文化的な敬意: 「サフール」は大切な食事の時間です。イスラム教徒の方々にとって大切な習慣であることを、子供たちにも(年齢に合わせて)伝えていくことが望ましいでしょう。「これは遠い国で、みんなを起こしてあげる優しい合図なんだよ」と教えることで、異文化への興味の入り口にすることができます。
- 「ブレインロット」への懸念: 「脳が腐るような動画ばかり見て大丈夫?」と心配される保護者の方もいるかもしれません。しかし、専門家の見解では、子供たちが一時的にナンセンスなものに熱中するのは自然な発達過程の一部であり、過度に禁止するよりも、親も一緒に楽しんで「なぜ面白いのか」を会話するきっかけにする方が建設的であるとされています。
トゥントゥントゥンサフール FAQ(よくある質問)
Q1. トゥントゥントゥンサフールとは何?
インドネシアのラマダン(断食月)で、夜明け前の食事「サフール」の時間を告げる太鼓の音をモチーフにしたキャラクターです。AIで作られた動画がTikTokで流行し、世界的なミームとなりました。
Q2. 名前を呼ぶ声は誰?
特定の声優はいません。AI音声合成サービス「ElevenLabs」の「Adam(アダム)」というモデルの声を使用しています。
Q3. トゥントゥントゥンサフールに恋しているって何?
ファンが作った二次創作の歌や動画シリーズのことです。不気味なキャラクターたちに対して、あえて恋愛感情を抱くというシュールな設定の歌詞が人気を集めています。
Q4. なぜ「イタリアン」ブレインロットと呼ばれるのですか?
初期に流行したこのジャンルのキャラクター(トララレロ・トラララなど)の名前がイタリア語風だったためです。トゥントゥントゥンサフール自体はインドネシア由来ですが、同じ「AIで作られた奇妙なキャラ」のカテゴリとして一緒に扱われています。
Q5. 子供が見ていて怖がっていますが、大丈夫でしょうか?
基本的にはジョークで作られた動画ですが、小さなお子様には刺激が強い場合があります。「これはAIが作ったアニメだよ」と説明して安心させてあげてください。あまりに怖がる場合は、視聴を控えさせた方が良いでしょう。
まとめ:言葉がつなぐ不思議な世界
「トゥントゥントゥンサフール」は、単なるネットの一過性の流行に見えて、実はAI技術、異文化(イスラム文化)、そして子供の心理が複雑に絡み合って生まれた、現代を象徴する非常に興味深いカルチャーです。
- 正体: サフール(断食前の食事)を告げる太鼓の音を擬人化したAIキャラクター。
- 魅力: 耳に残るリズム、少し怖いけど憎めない見た目、自分でも作れる参加型の楽しさ。
- 学び: インドネシアの伝統文化を知るきっかけや、リズム遊びとしての活用も可能。
次に子供が「トゥントゥントゥン!」と言っているのを聞いたら、「うるさい」と止めるのではなく、「それはね、遠い国で朝ごはんを知らせる合図なんだよ」と教えてあげてください。きっと、親子の会話がもっと楽しく、深いものになるはずです。
言葉の世界は、こんなにも自由で、不思議で、面白いものなのです。

